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風車版ムーアの法則で低コスト化

 ここから、風力発電の発電コスト低下につながる道筋をもう少し詳しく説明しながら、洋上風力発電の将来的な動向を紹介する。

 発電コスト低下の道筋は大きく2種類ある。1つは単純に量産効果だ。ただ、製品ごとというよりは過去の製品もすべて累積した生産量に対して発電コストが下がる「学習曲線」と呼ばれるタイプの量産効果である。

 もう1つは、風車の大型化やタワーの伸長による発電出力の向上によるコスト低下である。風車はブレードの長さのおよそ2乗に比例して定格出力が高まる。加えて、背が高くなると上空の強く安定的に吹く風を受けることができるので、1日を通しての平均出力が高まる。こうして風車1基当たりの発電量を増大させられれば、風力発電ファームとして同規模であれば、必要な風車の本数が減るため設置の工事費用が減り、費用対効果、つまりは発電コストが低下する。

 陸上風力ではこれらの量産効果や風車の大型化が発電コストを下げてきた。大型化のスピードはローター径がおよそ10年で2倍になるというペースである。微細化と大型化という方向性は正反対ながら、風車版“ムーア則”が約40年間続いてきたのである。ところが、最近はそのペースが急激に鈍り、10MW級が事実上の上限になっていた。

 ドイツのように景観や騒音問題で訴訟が相次いだり、風車の大型化が運搬コストや設置コストを急激に押し上げるようになったりして、“大型化の限界”が迫り、発電コストを下げられなくなってきた可能性がある。

ローター付きエッフェル塔が多数?

 一方、洋上ではそうした限界はまだしばらく先で、大型化は依然として大きなメリットだ。いくら大きくても船に載りさえすれば運搬は容易で、設置時の風車の重量も海中では軽減されるからである。洋上風車の寸法の大型化は最近むしろ加速しており、10MWを一気に超えて12M~14MWに達しつつある(図5)。あたかも、陸上風車の大型化を洋上風車が引き継いだ格好になっている。

図5 洋上風車の大型化が加速
図5 洋上風車の大型化が加速
洋上風車の寸法と定格出力の推移。実証実験がほとんどだった2000年ごろはローター径が76m、2016年ごろは同145mと陸上風車に比べても小型だった。その後、商用利用が見えてくるにつれて急速に寸法と出力が大型化して陸上風車を上回るようになった。2024年にはローター径は200m、出力は13M~15MW規模の風車が使われる見通しである。(図:German Offshore Wind Energy Foundationの図を本誌が加筆修正)
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 現在、最も大型の風車は、米GE Renewable Energyの12M級風車「Haliade-X 12MW」と、スペインSiemens Gamesa Renewable Energy(SGRE)の14M級風車「SG14-222 DD」で、ローター径は共に220mを超える(図6)。最大高さはフランスのエッフェル塔の300mに近い260m程度である。その風力発電ファームの建設は、ローター付きエッフェル塔を多数立てているようなものといえる。

図6 2社の巨大風車が受注合戦
図6 2社の巨大風車が受注合戦
ローター径200mを超える巨大風車2基の概要。受注先はいずれも洋上風力発電ファームである。(写真:各社)
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 この2基は現在、世界の洋上風力発電ファームで覇権を争っており、メーカー2社はこれらの風車を受注した洋上風力発電ファームを次々に発表している。メーカー名は未発表だが、日本の幾つかの洋上風力発電計画でも、12MW級の風車を使う構想がある。

 この巨大風車を扱うSEP船も既にある。例えば、丸紅が出資する英Seajacks Internationalの「Scylla号」で14MW級の風車を運搬、設置できるという(図7)。丸紅は2015年の時点でScylla号を建造、竣工させていた。SGREが受注した台湾Hai Long2(海龍2号)プロジェクトなどで2021年に設置作業に就くことが決まっているという。

図7 据え付け用SEP船も大型化
図7 据え付け用SEP船も大型化
丸紅などが出資する英Seajacks InternationalのSEP船「Scylla号」。船は自航式で1500トン規模。14MW級の風車数基を一度に乗せることができる。2021年には台湾の洋上発電プロジェクトでの設置作業に携わる予定である。(写真:丸紅)
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