全2096文字
PR

前回記事「MEMSの封止は、構造物を保護とコスト低減の両立がカギ」はこちら

半導体製品の製造工程を活用し、シリコンウエハーなどに微小な可動部品を構築するのがMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)である。このMEMSは、ウエハー内に微細部品が動作するための極小空間を設ける点でICのような半導体製品と異なる。この構造の違いによって、MEMSのパッケージングの工程においては、この空間にどのようにフタをするかが重要になる。本連載では、MEMS技術の第一人者である、東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻/マイクロシステム融合研究開発センター教授の田中秀治氏がMEMSのウエハーレベルパッケージング(WLP)の基礎について解説する。(日経クロステック)

 ウエハーレベルパッケージング(WLP)を用いた慣性センサー(加速度センサーやジャイロスコープ)のパッケージング形態のうち、最も保守的あるいは伝統的な例が図1である。MEMSダイには、キャップウエハーがガラスフリット接合されており、MEMSダイとASICとがプリント基板(PCB)上においてワイヤボンディングで接合されている。図2は図1より進んだ形態である。MEMSダイのボンディングパッドがキャップ上に形成されている。MEMSのフットプリントに対してボンディングパッドが占める割合は小さいとは言えない。そこで、それを2階に上げて「土地代」を節約しているわけである。なお、図2ではMEMSダイがフリップチップされているので、キャップが下に来ている。図3では、ASICにTSV(Through Silicon Via)が形成されており、その背面にバンプが形成される。

 図2に示すようにボンディングパッドをキャップ上に形成するには、MEMSウエハーとキャップウエハーとを導電性の材料、つまり金属で接合しなくてはならない。これにはAu、Ag、Cu、Al、Ti、AuSn、AlGeなどが使えるが、それぞれに使用上の注意点がある。最も接合が容易なのは酸化膜を作らないAuであるが、汚染の観点からAuが使えないことも少なくない。金属接合を用いることで、ガラスフリット接合と比べて接合代(シールリングの幅)を小さくできることも重要である。ガラスフリット接合では、ガラスフリットのスクリーン印刷幅、および溶融したガラスフリットの押し広がりを考えると、接合代は300μm幅程度になるが、金属接合では数十μm以下とすることができる。MEMSの機構部が1~2mm角であることを考えると、金属接合を用いることによる「土地代」の節約効果は大きい。

図1 慣性センサーのパッケージング形態
図1 慣性センサーのパッケージング形態
最も保守的あるいは伝統的な例である。(図:筆者が作成)
図2 慣性センサーのパッケージング形態
図2 慣性センサーのパッケージング形態
MEMSダイのボンディングパッドがキャップ上に形成されている。(図:筆者が作成)
図3 慣性センサーのパッケージング形態
図3 慣性センサーのパッケージング形態
ASICにTSVが形成されており、その背面にバンプが形成されている。(図:筆者が作成)