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WLPの進歩によるBAWフィルターの小型化

 スマートフォンの中の弾性波フィルターの数は増えている。RFフロントエンドモジュールの中で最も数の多いダイは弾性波フィルターである。これは、そもそも通信用バンドの数が多い上、キャリアアグリゲーションのような複雑な通信が行われるためである。これから5Gのサービスが提供されるようになることもあり、弾性波フィルターの数はますます増える。一方、スマートフォンのPCBでRFフロントエンドモジュールに与えられる面積には、おのずと限りがある。一定の面積内に多くのダイを搭載するためにPCBに両面実装が行われているが、やはりダイ自体を小さくすることが避けて通れない。

 BAWフィルターの共振子自体は、原理上、ほとんど小さくできない。単純には、周波数とインピーダンスが与えられれば、面積が決まるようなものである。そこで、それ以外の部分を小さくする必要がある。共振子間の距離を詰めたり、ウエハーテスト用の構造物を廃したりといった工夫もあるが、WLP自体を小さくする工夫も大切である。実際、パッケージングの壁を薄くし、さらにその中にビアを通すような構造が採用されている。しかし、このような改善には限りがあるため、ダイレベルで両面実装したり、2階建てにしたりすることも考えなくてはならないだろう。

圧力センサーのWLP

 圧力センサーでは、その用途に応じて様々なパッケージ形態が採用される。WLPを用いるものは多くないが、図4に示すように、ダイヤフラムを保護する微小な圧力ポート付きのキャップ、およびパッケージストレス緩和のためのインターポーザーが、ウエハーレベルで取り付けられているものもある。これはトランスデューサーを気密封止する慣性センサーのWLPとは大きく異なるが、WLPの一種である。図5にその実例を示す。

図4 圧力センサーのパッケージング形態
図4 圧力センサーのパッケージング形態
(図:筆者が作成)
図5 樹脂モールドを取り除いた圧力センサー「STMicroelectronics LPS22」
図5 樹脂モールドを取り除いた圧力センサー「STMicroelectronics LPS22」
(撮影:東北大学)
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 圧力センサーの一種であるMEMSマイクロホンは、PCBに裸のMEMSダイとASICが実装され、PCBまたはカンでフタがされたパッケージング形態を採っている。音波を感知するマイクロホンのダイヤフラムをキャップウエハーで覆うわけにいかないので、WLPは用いられない。