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新型コロナウイルスの影響で、日常の生活環境が大きく変化している。こうしたなか、「くらしアップデート」を掲げるパナソニックは何を目指し、どう変わっていくのか。そして我々の生活に浸透しているGAFAにどう対抗していくのか。同社の専務執行役員でCTOおよびCMOを務める宮部義幸氏に話を聞いた。(聞き手は中道 理、内田 泰、東 将大)

(写真:今 紀之)
(写真:今 紀之)

新型コロナによって我々の生活環境が大きく変化しています。パナソニックは今後、どのような企業を目指していくのでしょうか。

 暮らしの領域でいうと、道具である家電を作る企業から、暮らしを良くするための企業へ変わっていこうとしています。もちろん、道具は必要なので提供し続けますが、“道具だけじゃない"企業になるつもりです。当然、ビジネスの在り方も変わっていくでしょう。

 今回のコロナ禍で、家という環境が変化しています。これまで家の中でやることは、家事や休養、睡眠、娯楽だけでしたが、これからは家の中で仕事もするし、教育、医療も受けるようになります。ありとあらゆることを家の中でやるようになっていくのです。

 実は、“巣ごもり需要"が増えたことで、日本国内では、家電部門は絶好調と言える状態になりました。加えて、将来的には、B to B向けに展開していた製品を、家庭向けにも投入できる可能性があります。例えばICカードの決済端末のような、普段は家の外でしか接したことがない機器を、家の中でも使う機会が増えるかもしれません。家電メーカーとしては大きなチャンスと言えます。

新しい生活スタイルでは何が変わるのでしょうか。

 実は昔の生活とよく似ています。産業革命以降、大量生産・大量販売に移り変わっていくなかで、家庭の役割が矮小(わいしょう)化されてきた部分がありました。その結果として失われたのが、「ワンマイル経済圏」です。

 昔ならば、家の周りで全てのことが片付きました。買い物や出前にしても、近所の店が配達してくれました。今の時代では、そんなことをしてもコスト競争力の観点で全く勝てないわけです。

 しかし、感染症対策のためにいざ家から出られなくなってみると、家の近くだけでは必要な物を調達できないことが分かってきました。そこで「Amazon」の通販がさらに成長し、出前の「Uber Eats」が台頭してきました。ここに名前が挙がるのが日本企業ではなかったことが、やはり悔しい。このワンマイル経済圏を、デジタルテクノロジーを使って効率化し、経済合理性を持たせた形で復活させることで、新しい生活スタイルに合わせた価値をユーザーに提供できるようにしたいと考えています。

 実はパナソニックは以前から、「ナショナルショップ」というワンマイル経済圏を全国各地に持っています。今ではその数は減ったものの、コンビニエンスストア並みの店舗数があります。昔に比べると地域ユーザーとのつながりが浅くなっているのは事実ですが、そうした販売店が競争力を取り戻す支援ができないかとも考えています。