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なぜこのタイミングで、UWB(Ultra-Wide Band)技術に向けて自動車や電機業界などが利活用に向けて動き始めたのか。UWB関連技術の研究・開発や標準化、それらを活用したビジネス作りを長年実践してきた横浜国立大学の河野隆二氏が、技術の本質や利用シーン、規制緩和の状況からひも解き、今後のビジネスチャンスを語る。(本誌)

 超広帯域(Ultra-Wide Band、以下、UWB)無線技術は、これまでに何度も学術、産業においてブームとなり注目されたが、特に日本では本格的な活用が進まなかった。しかし、2019年5月20日の総務省令1)の公示・施行により日本においても屋外利用が一部解禁された。

 すでに、自動車のキーレスエントリーやiPhone 11などにUWB無線の測距測位機能が応用され、他の無線では実現が困難なサービスがビジネスとして広がり始めている。同時に量産化に適したデバイスの開発が進んでおり、加えて2021年1月に再度電波法技術基準の更新が想定されることから、今後ますますUWBを活用した新規ビジネスに拍車がかかるとみられる2)

 筆者は、これまでUWBに関して長年、研究開発、標準化、法制化、ビジネスプロモーションを実践してきている。本稿では、こうした経験を基にUWB無線の特徴、課題と解決技術、応用先、日本にとってのビジネスチャンス、今後の標準化動向について紹介することで、新規ビジネスのヒントを提供したい。

UWBの唯一無二の特徴

 改めて、UWB無線の定義を確認する。UWBの定義はその名の通り超広帯域であることだ(図1)。米国防高等研究計画局(DARPA)の定義では、比帯域幅(=帯域幅B/中心周波数)が25%以上、米連邦通信委員会(FCC)の定義では20%以上あるいは帯域幅が500MHz以上の無線システムをいう。実際、第3世代移動通信システム(3G)やIEEE802.11bで使われるスペクトル拡散(Spread Spectrum、通称SS)3)技術に比べてはるかに広帯域である。

図1 超広帯域を活用するUWB
図1 超広帯域を活用するUWB
超広帯域を使うことで超短時間パルス波で通信できる。周波数帯域幅当たりの電力量(電力スペクトル密度)は、家電機器動作による放射雑音よりも小さい。(図:筆者)
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 この超広帯域を生かして、他の無線通信方式にはない3つの特徴を備える。(1)超高速・大容量、(2)超高精度測位・測距と通信の同時実現、(3)周波数共用による他無線システムとの共存、である(図2)。これらを理解することが、UWBの現状を活用した、まだ着手されていない新しいビジネスを見つけることにつながる。

図2 UWBの3つの利点
図2 UWBの3つの利点
この3つの特性を理解することで、まだ市場に出ていない新しいアプリケーションを導出できる。(図:日経エレクトロニクス)
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