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都市設計や防災、建設工事、エンタメ、生活、そして技術開発で3Dデータの活用が広がっている。大規模な3Dマップから小規模なものまで、用途ごとに必要な3Dデータは幅広い。まだ実用化に至っていない領域もあるが、今後3Dデータの流通と連携が進むことで複数の業種が参入し始め、さらに用途は拡大していく。

 現実世界の3次元(3D)データが活用できる領域は、大きく6つある。(1)都市設計、(2)防災、(3)建設工事、(4)エンターテインメント(エンタメ)、(5)生活、(6)技術開発、だ(図1)。以下では、この6領域について、すでに動き始めた各社の取り組みを見ていく。

図1 複写世界を基盤にした用途が拡大
図1 複写世界を基盤にした用途が拡大
3Dデータによる複写世界を基盤として、様々な用途が生まれる。特に、目に見えないデータの可視化や、シミュレーション(予測)、デジタルデータでの保存(アーカイブ)が大きな割合を占める。都市設計のように企業や組織が主導する大がかりなものだけではなく、エンタメや生活など、ユーザーの身近な用途が増えつつある。(写真と図:図は日経クロステックが作成、写真は左上から順に、National Research Foundation Singapore、ダイナミックマップ基盤、Symmetry Dimensions、日経クロステック撮影、カリモク家具、OUR Shurijo)
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【都市設計】

日当たりやボトルネックを事前調査

 都市設計は、人工衛星や航空機などを使って得た数km四方という比較的大きな地域の3Dマップを活用する。人流や物流のボトルネックを発見したり、新たなインフラや施設を作った場合の効果を調べたりする。

 シンガポールの国立研究機関であるNational Research Foundation Singaporeは、シンガポール国内を丸ごと3D化した「Virtual Singapore」を一般に公開している(図2)。都市設計に関わる企業が、この3Dデータを利用できるようにすることで、効率的に計画を推進できるようにするのが狙いだ。

(a)太陽光発電の効率を分析
(a)太陽光発電の効率を分析
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(b)商業施設の退館時の人流誘導シミュレーション
(b)商業施設の退館時の人流誘導シミュレーション
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(c)都市部の熱中症対策のための気温分布の可視化
(c)都市部の熱中症対策のための気温分布の可視化
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図2 複写世界を都市設計の検討基盤に活用
National Research Foundation Singaporeが進める「Virtual Singapore」上で太陽光発電の効率を分析して可視化した様子(a)。シンガポールを丸ごと3D化したプラットフォームで、建物の高さ、屋上の形や面積、日光の量などのデータから設置場所や発電コストなどを分析できる。商業施設の3Dモデルを来場者を誘導する際の人流シミュレーションに使っている(b)。海洋研究開発機構(JAMSTEC)がシミュレーションした気温分布データを3Dマップに重ねたもの(c)。「地球シミュレータ」を用いた暑熱環境予測の結果を可視化した。(写真:(a)と(b)はNational Research Foundation Singapore、(c)はJAMSTEC)

 例えば、Virtual Singaporeの3Dマップの上に、都市の気温や日照データなどを取り込んで重ねて示すことで、屋上を緑化したり新しい建造物を建てたりする際にどういった効果・影響があるかを事前に確認できる。

 商業施設やイベントホールなどの3Dデータがあれば、来場者がどのように動くのかシミュレーションして分かりやすく可視化できる。集客に効率的な店舗の配置や、来館時や退館時などの混雑箇所を予想可能だ注1)

注1)3Dマップを使えば、坂道などの斜面の勾配や、階段など立体的な地形をふまえたナビゲーションが可能になり、人の移動の支援や物流ルートの効率化に活用できる。

 ヒートアイランド現象や熱中症対策にも3Dマップが使える。埼玉県は、熊谷市の熊谷スポーツ文化公園の周囲5km四方を3D化し、海洋研究開発機構のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を用いて気象条件や建物、樹木などの影響を考慮した予測を実施。植林位置の決定などに利用した注2)

注2)名古屋工業大学は、東京オリンピック・パラリンピックのマラソンコース周辺の気象状況を地球シミュレータで予測し、3Dマップに重ねて可視化した。日なたや日陰の差を示すのが狙いだ。