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2020年11月にそろって発売となった次世代ゲーム機「PlayStation 5」と「Xbox Series X」。両製品を比較すると、演算性能などの基本スペックは同等でありながらサイズやデザイン、熱設計などが大きく異なる。これらは何の違いから生じたのか。分解した内部構造から設計思想を分析した。前回の記事はこちら

【Series X分解】
念入りなエアフロー設計

 もう一方のSeries Xは、小型化とデザインを重視して設計されていた。例えばデザインでは、縦置きしたときの天面にある通気口は、斜めから見るとイメージカラーの緑色が穴から見える(図11)。わざわざ樹脂板を1枚追加してでも表現したかったのだと思われる。

図11 小型化に加えデザイン重視のXbox Series X
図11 小型化に加えデザイン重視のXbox Series X
Xbox Series Xを横置きした場合の外観。縦置きしたときに天面側となる大きな通気口は、見る角度によって穴の一部が緑色に見える。デザインを重視して、わざわざ外装の内側に緑色の樹脂板を差し込むことでイメージカラーを表現したとみられる。(写真:右下は加藤康、それ以外はスタジオキャスパー)
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 エアフローを重視して設計しているのもSeries Xの特徴だ(図12)。縦置き時の本体底部から天面に向かって、吹き上げるような風の通り道を作っている。天面側に位置する、直径130mmで厚さ38mmの大きな冷却ファンは、米Aavid Thermalloy製である。

図12 吸気から排気へ一方通行のエアフローを実現
図12 吸気から排気へ一方通行のエアフローを実現
Xbox Series Xは、写真左側の面の通気口から吸気し、右側の冷却ファンから排気するエアフロー構造を持つ。縦置き時に天面となる大きな通気口側にある直径130mmの大型冷却ファンには、本などを置かれて通気口が塞がれたときのために、側面にも排気口を備える。(写真:加藤康)
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 羽根車の直径に対してモーター径が小さい。高回転には適さず、さらに羽根の取り付け角度が小さいので高風量にも向かない。代わりに、羽根を大きくして風量を稼ぎ、回転数を抑えることで静音化を狙ったとみられる。

ノイズ対策してでも電源を上へ

 本体内部ユニットは、電源ユニットやアルミダイカストのメインフレーム、メイン基板、ヒートシンクなどがひとまとめになっていた(図13)。このユニットにはゴムバンドが巻かれていた。このゴムバンドはきょう体との隙間や振動による異音を防止するためのものとみられる。

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図13 アルミダイカストのフレームを中心にした本体内部ユニット
図13 アルミダイカストのフレームを中心にした本体内部ユニット
外装ケースから本体内部ユニットは引き抜くことで取り外せる。本体内部ユニットは、ゴムバンドで部品群を巻いている。余計は隙間を無くすことで空冷効果を高める効果を狙っていると推測される。横置きした場合、本体内部ユニットは天面側から、電源ユニット、サブ基板、メインフレーム、メイン基板、サブフレーム、ヒートシンク(銅板が上側)の順番に並ぶ。(写真:加藤康)
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 本体内部ユニットの中でも独特な配置構造をしていたのが電源ユニットだ(図14)。一般的に、コンセントからの家庭用電源の信号はノイズが多いため、通常ならなるべく手前で直流電源に変換したい。つまり、電源ユニットは電源端子の近くに位置すべきなのだ。

図14 電源を天面側に置く、まさかの配置
図14 電源を天面側に置く、まさかの配置
電源ユニットは、内部ユニットの天面側に取り付けられている。100Vの電源入力端子は本体底面側にあるため、100Vの電源を一度基板の上を渡らせ、12Vの直流電源にした後、またこの直流電源を基板の上を通して基板に入れるという構造になっている。設計者は電源にノイズが乗ることを嫌うため、これは一般的ではない構造である。なお、電源ユニットの上面を覆う樹脂製のカバーがあったが、これは天面の通気口から冷却ファンの隙間を抜けて金属片などが落ちて入り込まないための対策とみられる。(写真:加藤康)
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 ところがSeries Xでは、電源ユニットを天面側に配置し、わざわざケーブルを内部で引き回している。コードの家庭用コンセントから電力を取り込み、12Vの直流電源にして各部品に電力を供給するのに、きれいな直流12Vの線とわざわざ交差させるような構造としている。

 「この構造は電源の技術者としては避けたい設計だ」(分解に同席した技術者)。下部にディスクドライブを配置したいといったデザイン的な意図などがあるとみられる。

 電源ユニットは樹脂製カバーと金属製カバーに覆われている(図15)。樹脂製カバーは電源ユニット上部の穴を覆うように取り付けられている。電源ユニットは空冷用のファンの真下に搭載してある。樹脂製カバーは、排気口にネックレスや指輪などの金属類が落下した際、落下物と電源ユニットとの接触を防ぐ目的で取り付けたとみられる。電源ユニットは「非常に小型で、いっぱいに詰め込んだ印象」(分解に同席した技術者)だ。

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図15 ぎっしり詰まった電源内部
図15 ぎっしり詰まった電源内部
樹脂製カバーと金属製カバーを外すと、電源ユニットの黒い本体が出てくる。電源ユニットの内部には、電子部品が隙間なく搭載されていた。白い固形物は部品同士の接触などを防ぐ役割があるという。(写真:加藤康)
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