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 SiCパワーMOSFETや絶縁ゲートドライバーIC、DC-DCコンバーターIC、オペアンプIC――。ここ数年、ロームはアナログICやパワー半導体の分野で、特徴のある新製品を矢継ぎ早に市場に投入している。目指すは、海外のアナログ/パワー半導体メーカーと伍して競争することだ。そこで同社のCTO兼LSI事業統括を務める立石哲夫氏に、特徴のあるアナログICやパワー半導体を生み出す秘訣や、目標とする半導体メーカー像などについて聞いた(聞き手:中道 理=日経クロステック/日経エレクトロニクス、山下勝己=ライター)。

(写真:太田未来子)
(写真:太田未来子)
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技術の側から見た場合、ロームとはどんな会社でしょうか。

 当社には3つの強みがあります。第1はチャレンジ精神。新しいアイデアを積極的に試す文化があります。SiCパワーMOSFETや絶縁ゲートドライバーICなどは、そうした文化から生まれた製品です。いずれも技術者が長い間チャレンジし続け、やっと実を結んだ成果です。

 第2は垂直統合型半導体メーカー(IDM)であること。製造、開発、販売のすべてが連携できており、それらを有機的に組み合わせられるため、品質の高い製品を短期間で製造できます。特にアナログICでは有利です。製造プロセスでの微妙な調整で「性能が出る、出ない」が決まるからです。

 最後が、アナログICやパワー半導体の製品開発において、様々な技術をすり合わせられる環境があることです。当社では、多様な技術者が近くで働いていて、互いにきちんと会話できる環境があります。しかも当社には「ゼネラリスト」が多い。このため様々な技術のすり合わせを短期間で実行して、製品に仕上げられます。

 付け加えるなら、製造装置を自分たちで作っていることも強みの1つでしょう。必要十分な製造装置は、なかなか売っていないからです。確かに市販の製造装置は性能が高い。しかし当社にとっては不要な機能も付いています。これがコストを押し上げる要因になる。半導体製品の性能指標の中でコストが最も重要ですので、コストをしっかり低減しなければなりません。そこで当社にとって最適な製造装置を自分たちで作っているわけです。

 SiCパワーMOSFETで製造装置を自作するのは、そもそもまだ市販していないことに加えて、ノウハウを囲い込む意図があります。市販の製造装置を使うと、どの半導体メーカーでも作れるようになってしまいますから。

なぜゼネラリストが多いのですか。

 ゼネラリストが育ちやすい社風だからです。当社は、仕事を細かく区切っていません。1人の設計者が製品企画から評価、テストまでを担当します。いわゆる日本の昔ながらの「技術部」が存在します。このためゼネラリストが多く生まれるわけです。

 一方で、スペシャリストも欠かせません。会社全体の技術を引っ張っていくだけでなく、さまざまなビジネスの場面で技術的な判断が必要だからです。もちろん、ビジネスの最終判断はマネジメント担当者が下しますが、技術的なサポートが不可欠です。そのサポートをスペシャリストが行う。特に、シニアのスペシャリストには様々な知識を身に付けてほしい。そしてマネジメント担当者の判断を的確にサポートしてほしいと考えています。

スペシャリストとは、どのような人ですか。

 例えば、給料は部長と同じですが、部下がゼロという存在です。そうした人たちをどうやって作るのか。日本の会社には、マネジメント職の階層構造があります。これに加えて当社は、技術専門職として歩める階層構造を用意しています。この階層構造を選択すれば、スペシャリストとして生きていけます。しかし、この人事制度はもっと強化しないといけない。スペシャリストとしてかなり上の階層まで行けるルートを作ったり、マネジメント職の階層構造との間を行き来したりする仕組みを作る必要があると考えています。