伸縮性のある生地に電気配線を施してセンサーを搭載したスマート衣料「e-skin」を開発する、スタートアップのXenoma(ゼノマ)。有機エレクトロニクスで世界的に有名な東京大学教授の染谷隆夫氏が率いた科学技術振興機構(JST)のプロジェクトからのスピンオフだ。その同社がヘルスケア分野を中心に展開を加速している。「着るセンサー」のビジネスはどう広がっていくのか。CEOの網盛一郎氏に聞いた。(聞き手:内田 泰、東将大)
e-skinはモーションセンサーを搭載することで人の動きを捉えるセンシングが出発点ですが、最近では様々な展開を進めており、既に重要なところに石を置いたと思っています(図1)。例えば、2020年1月には米国のコンシューマーエレクトロニクスの展示会「CES」で、e-skinに筋電気刺激(EMS:Electrical Muscle Stimulation)の機能を加えた「e-skin EMStyle」を発表し、20年4月には睡眠状態の見守りや転倒時の通知機能がある高齢者向けのスマートパジャマ「e-skin Sleep & Lounge」を発売しました。21年3月には歩行解析サービス「e-skin LETS WALK」の提供を開始しています。
我々がやろうとしていることの核心は、少子高齢化社会における重要課題である健康寿命の延伸に貢献する仕組みを作ることです。一般に医療サービスは病気になってから受けるものなので、健康な人の医療情報は取得できません。しかし、自分は病気じゃないと思っている人の中には、突然、病気を発症する人もいます。例えば、それが心筋梗塞など重篤な場合は、後遺症が残ることもあります。もし、その人がセンサーを搭載した着心地のいい服を着ていて身体状態を普段からモニタリングし、発症する3日ぐらい前に警告を出すようなサービスができれば後遺症が残らずに済むかもしれません。やはり、センシングするだけだと人に行動変容を促すようなサービスは作れないので、我々はソリューションにも踏み込んでいます。