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2025年に国内で約800億円の市場を築くとの予測(インプレス総合研究所調べ)もある、ドローンによる物流が本格的に立ち上がろうとしている。まずは既存の物流で高コストが問題視されている中山間地域や離島などの過疎地で事業化がスタートする。その多くはマルチコプター型ドローンを利用するが、配送距離が長い地域では固定翼VTOL(垂直離着陸)ドローンの出番がありそうだ。

 日本郵便は21年6月に、機体開発の国内トップベンチャーであるACSLと、郵便・物流領域での連携を強化することを目的に業務提携契約を締結した。この契約では、日本郵政キャピタルを通じて第三者割当増資によって約30億円を出資した。この出資額は同社の本気度を示している。

 ドローン物流を最初に導入するのは、1軒当たりの配達が高コストで配達員の負荷も高い中山間地域などの過疎地だ。ユニバーサルサービスである郵便配達は、高コストであるからといって法律上、撤退が認められない。そこで、ドローンを活用して配送を無人化することで、できるだけコストを削減することを目指す。もっとも、ドローンだけでは配達が完結しないことも多いため、配送ロボットと組み合わせたりする(図1)。

図1 日本郵便はドローンと配送ロボットを連携
図1 日本郵便はドローンと配送ロボットを連携
日本郵便は中山間地域など過疎地での郵便配達で、ドローンと配送ロボットを連携させる仕組みの実証を21年度に行う予定。町のコミュニティー施設までドローンで配送し、その後、各家庭に配送ロボットで受け渡す。写真は、実証で使うZMPの配送ロボット「DeliRo」。(写真:ZMP)
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 「通常、中山間地域では山のふもとに家が集まっていたりする。1軒の敷地が広大ならドローンを着陸させられるが、そうでなければ個別配達は難しい。そこで、ドローンを町のコミュニティーセンターなど広い敷地に着陸させ、そこから配送ロボットで届けることを検討している」(日本郵便オペレーション改革部担当部長の上田貴之氏)。21年度に東京都西多摩郡奥多摩町で実証を行い、成功すれば23年から全国展開していく予定だ。また、両社は今後、専門チームを作って物流専用機を開発していくという。