2020年5月12日、トヨタ自動車が同年3月期の連結決算を発表した。売上高は29兆9299億円、営業利益は2兆4428億円と、いずれも前期比-1.0%で踏みとどまった。減少率が同じなので当然なのだが、売上高営業利益率も8%台を維持している。
だが、皆が注目していたのはむしろ2021年3月期の業績予想である。多くの企業が予想の公表を控える中、同社は見通しを示した。それによると、同期の連結販売台数は前期比21.9%減の24万台。それに伴い。売上高は同19.8%減の24兆円、営業利益は同79.5%減の5000億円まで下がるという。このあまりの落ち込みに多くの人が驚いた。

私はこの決算が発表されたとき、トヨタ自動車にも納入している企業グループとビデオ会議を実施していた。2021年3月期の見通しが分かると、「これはひどいですね……」と話題になったぐらいだ。
そこで私は、独自にトヨタ自動車の業績予想を分析した。20年3月期実績から、同社の年間固定費は約15兆2160億円と類推できる。すると、売上高に占める変動比率は約41%とみられる。以下の計算式で損益分岐点売上高(営業損失が出ないギリギリの売上高)が導き出せる。
損益分岐点売上高(筆者推定)
=固定費÷(1-変動比率)
=15兆2160億円÷0.59
=25兆7900億円
あくまで私の類推であることはあらためて強調しておきたい。このコスト構造を前提として21年3月期の業績予想を考えてみる。同期の売上高が予想通りに24兆円にとどまるのであれば、総コストは25兆560億円となり、1兆円超の営業損失を出すことになる。
売上高が24兆円だった場合の総コスト(筆者推定)
=売上高×変動比率+固定費
=24兆円×0.41+15兆2160億円
=25兆560億円
だが、トヨタ自動車は21年3月期の営業利益を5000億円と“予想”している。差額は1兆5000億円ほどだ。つまり、同社は利益改善に関してかなり高いハードルを自ら設定していると考えられる。