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 日産自動車は2019年度の連結決算を発表した。締め月は20年3月なので、新型コロナウイルスの影響はそれほど入っていない。本格化するのは2020年度の決算になるだろう。

 19年度の主な経営指標は次の通りだった。

販売台数:493万台(前年度比10.6%減)
売上高:9兆8788億円(同14.6%減)
営業損益:404億円の損失(前年度は3182億円の利益)
純損益:6712億円の損失(同3191億円の利益)

 2020年度の業績予想については、「現時点では新型コロナウイルス感染症が事業に与える影響が未確定なため、連結業績予想を合理的に算定するのが困難な状況」(同社)として、発表を見送った。

 現在、消費者は耐久消費財を買わない。耐久消費財とは、家電や自動車など「頑張れば、もっと使えるもの」である。消費者は将来の収入減不安もあり、食指が動かない。

 これは大まかな数字で厳密さは欠くものの、日本には約6000万台のクルマがあり、1台のクルマが廃車になるまでの期間は平均で約12年といわれる。6000万台を12で割ると500万台。これは、日本の新車販売台数と近い。今後は、この500万台がもっと減る。

 日産自動車の2019年度末における自動車事業のネットキャッシュは1兆646億円と多いものの、同年度累計の同事業のフリーキャッシュフローはマイナス6410億円だった。同社社長兼最高経営責任者(CEO)の内田誠氏は、コストの合理化で黒字転換を図らなければならない。さらに、並行して技術開発や新車投入を進め、ブランド力強化に取り組む必要がある。難しいかじ取りを迫られている。

日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)の内田誠氏(決算説明会の中継映像を日経クロステックがキャプチャー)
日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)の内田誠氏(決算説明会の中継映像を日経クロステックがキャプチャー)
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効率優先でモデルチェンジ見送り

 事業構造改革計画として新たに打ち出された施策で印象的だったのは「生産能力の最適化」「商品ラインアップの最適化」の2つだ。

<生産能力の最適化>

  • 生産能力を20%削減し、年間540万台体制とする

<商品ラインアップの効率化>

  • 2023年度までに車種数を20%削減
  • 今後18カ月で12の新型車を投入
  • 「車齢」を若返らせる(次のモデルチェンジまでの期間を現状の5年超から4年未満に縮める)

 説明会の質疑応答で、最後の質問者が「なぜモデルチェンジが遅れ、マイナーチェンジばかりだったのか。経営陣はどのような議論をしていたのか」と問うた。だが、この本質的な質問への直接的な回答はなかった。私が耳にした端々の話を総合するに、これまでは台数を追い求めていたり、似たような車種同士で売り上げを奪い合うカニバリゼーションを心配しすぎたりしており、モデルチェンジは力を注ぐ対象になっていなかったようだ。

 ちなみに、私はかつて自動車メーカーで働いていたが、この「車齢」という言葉は、1台のクルマがどれぐらい使われ続けたかという意味でしか用いたことがなかった。そのため、発表会で「車齢」という言葉を聞いたときは、「謝礼? 販売店へのインセンティブ(販売奨励金)のことか」としばし勘違いしていたほどだった。

 日産自動車はこのような再建策を打ち出したが、自動車メーカーの経営はサプライヤーなしには成り立たない。先に挙げた施策は、当然ながらサプライヤーに影響を及ぼす。