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「給料なんて1円も変わらないんだよ」

 20年以上も前のこと。新卒で入った会社で働き始めてしばらくたった頃、先輩からそう聞かされた。先輩は30歳代の中盤だったと思う。独身寮に住む同期と給与明細を見せ合っていたが、基本給は1円も変わらず、違うのは残業代だけだったという。

 管理職に昇進すると、多少は給与に差が出てくるようだ。執行役員、取締役ともなれば、さすがに額が違ってくる。それでも、私は大きな違和感を抱いた。私が勤めていたのは、いわゆる大手総合電機メーカーだった。よくいえば平等である。

(出所:adam121/PIXTA)
(出所:adam121/PIXTA)

 不思議なのは、サボっている社員がいるように思えなかったことだ。この日本人の勤労観は、現在の私に大きな影響を与えている。当時の私は上司に給与を上げてもらえないか相談したが、「無理なことを言うな。仕事で得る真の報酬は経験だ」と説教された。

 今はその言葉が正しいと理解しているが、当時はいろいろあって自動車メーカーに転職した。給与は実力に応じて変わるとのことだった。ありがたいことに、入社して数年後に最優秀評価を頂いた。給与は変わった。ただ、微増だった。

 例えば、社員の平均給与が500万円だとする。その組織に利益を1億円稼げる(あるいはコストを1億円削減できる)社員がやってくるとする。理屈では9000万円ぐらいの給与を与えても、その社員がいないよりは会社は得をする。しかし、ここまでドラスチックな差を付ける伝統的日本企業は存在しない。

 わずかな差であっても、差があること自体が社員にとっては重要であり、周囲から抜け出ようと努力する。これは、社員間を互いに競わせる優れたシステムだと思う。しかし、私はもっと当たり前のことに気づいた。それは、給与水準はどの業界に進むかでほとんど決まるということだ。要因としては「業界>会社>個人」という順ではないか。

技術者が年収を増やすための方法は

 私はその後、経営コンサルタントになり、今では友人と会社を経営している。偉そうなことを言っていても、仕事がなければ食っていけない。会社員なら、口先だけでも給与はもらえる。しかし、起業したら、偉そうなことを言っても言わなくても、稼がないといけない。

 この10年で、少なからぬ同業者が消えていった。これまで仕事が途絶えなかったのは、幸運としかいいようがない。私は、「稼げなくなったら撤退するだけ」という分かりやすさが気に入っている。

 ところで、私は36冊目の著作として『1年仕事がなくても倒産しない経営術』(ハガツサブックス)を2020年8月に出版した。これは文字通り、生き延びるための経営術を書いた。日経クロステックの読者の多くは、技術者かつサラリーパーソンのはずだ。よって経営者ではない立場が大半と思われる。

 そこで、今回は特別編として、「技術者が年収を増やすための方法」について私の考えを述べたいと思う。その結論は「顧問かコンサルタントに転じること」だ。