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 先日、出演したテレビ番組で日本政府の「Go To キャンペーン」事業についてコメントする機会があった。私は以下のようにコメントした。

 「Go To トラベル」を全てやめろと私はあまり言いたくない。観光需要には、公共交通機関や宿泊施設だけではなく飲食店や土産物店なども含まれており、裾野が広い。一方で、「Go To Eat」は確かに飛沫感染が気になる。個人的にも不特定多数との会食は避けている。ただし、家族間や恋人間、1人での利用ならそれほど問題がないのではないか。だったら、「Go To Eat Alone」「Go To Eat With Family」などの形で続ければよい。あるいは、会食前の1週間から10日ほどは他の会食を控えればよい。

 このコメントに対して、“自粛徹底派”から「Go To トラベルを大丈夫と言うと、旅行先で派手な行動をするからいけない」と批判された。旅行してもよいというメッセージ自体が人々の行動に緩ませるのだという。

 一方、“経済を守れ派”からは「会食前に1週間も他の会食を控えてしまえば、飲食店の売り上げが減ってしまうので影響が大きい」と批判された。そんなことをメディアで発言したら迷惑だという。

 今、新型コロナウイルスを巡って“宗派”間に壁ができているように思う。私は真ん中が正しいと思っているが、両宗派には受けが良くないようだ。日本が生んだ最高の歌姫である中島みゆきさんは「あんな時代もあったねときっと笑って話せるわ」と歌ったが、今ほどそれが心に染みる時はない。

サプライヤーの新陳代謝が必要だ

 2020年はサプライチェーンも新型コロナウイルスに左右された。当初は中国からの調達が難しくなった。感染が世界中に拡大すると、欧州連合(EU)からの調達が滞り、さらに米国や南米、中国以外のアジアにも影響が及んだ。その後、産業界には復活の兆しもあったが、11月以降の「第3波」によって再び暗雲が垂れ込めている。

(出所:unlim3d/PIXTA)
(出所:unlim3d/PIXTA)

 本来、企業のサプライチェーンは常に新陳代謝が必要だ。調達先の価格を競合させたいという目的もあるが、それだけではない。技術の調達先が固定化するのを防いだり、BCP(事業継続計画)の観点から生産地を分散させたりする狙いもある。

 しかし、20年はほとんど出張に行けず、サプライヤーベースの拡大は極めて難しかった。海外はそもそも出向くという発想にならなかったし、国内ですら例年通りにはいかなかった。

 Go To キャンペーン事業を巡る論争からも分かる通り、日本人が国内を移動することさえためらったのだ。どうすれば光が見えるだろうか。

 以前だったら考えられなかったが、今は対面の売り込みに変わる手段として、「YouTube」などの動画プラットフォームで各社が動画を公開している。確かに、サプライヤーとしても潜在顧客ごとに提案するよりも、収録した動画をいつでも見られるようにしておいた方が効率的なのかもしれない。

 私たちが調達担当者を対象に実施した調査でも、動画のプレゼンテーションを見たことがあると答えた人は多い。動画の内容としてよくあるのは、「バーチャル・プラント・ツアー」と呼ばれるものだ。文字通り、サプライヤーが自社の工場を紹介している。

 もし興味があれば、ぜひ英語で海外企業を検索してほしい。多くのサプライヤーが工場の概要にとどまらず、製造プロセスや倉庫の状況などについても説明している。チャット機能で質問に答えてくれる場合もある。希望すれば、ビデオ会議で面談も可能だ。

 ただし、調達担当者としては動画の説明をうのみにはできない。実際に訪問するとき以上に見極めが必要という声も多い。バーチャルで実施するにしても、事前の予定にない質問をしたり、事前の予定にない場所を見せてもらったりするなど、実際の監査に近い状況をつくらなければならない。

ワクチン接種率がKPIに

 それでも、オンラインのコミュニケーションには限界がある。オンライン推進派でさえも、対面の価値を認める。どうすれば対面の商談や監査をもっと気軽に実施できるだろうか。