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 2021年元旦、日本自動車工業会(自工会)をはじめとする自動車関連団体が、「私たちは、動く。」と銘打った広告を新聞各紙に出稿した。さらに、「クルマを走らせる550万人」と題した動画をテレビCMや「YouTube」などで流した。

 この550万人は、日本の自動車産業および関連産業に従事している人の数を表している。完成車や部品だけではなく、旅客輸送や保険といったサービスも含めた数だ。企業の垣根を越えて日本全体の自動車関連産業の従事者を鼓舞する内容になっている。

 この動画とは別に、「今こそ550万人の力を結集するとき」という動画で、自工会会長の豊田章男氏(トヨタ自動車代表取締役社長)が熱いメッセージを投げ掛けている。20年は新型コロナウイルス禍によって移動が制限され、逆説的に動くことのかけがえのなさを再認識したという。その移動を支える自動車産業も多くの努力によって成り立っていると、同氏は述べた。

 さらに、自動車関連産業が雇用だけではなく15兆円の納税やさまざまな経済波及効果も生み出している点も同氏は強調した。菅義偉首相が50年までにカーボンニュートラル(炭素中立)、脱炭素社会の実現を目指すと宣言したことにも触れ、「ご英断に敬意を表します」と語った。

豊田章男氏
豊田章男氏
(出所:動画「今こそ550万人の力を結集するとき 自工会・豊田会長 年頭メッセージ」)

 「ご英断に敬意を表します」と豊田氏が語ったことに、私を含めて違和感を抱いた人は多かったかもしれない。なぜなら、同氏は先日、日本のカーボンニュートラル政策に疑問を呈していたからだ。

 同氏は20年末に開催した自工会のオンライン会見で、電動化と電気自動車(EV)化を混同する報道に苦言を述べていた。電動化には、燃料電池車(FCV)やハイブリッド車(HEV)もある。さらに、二酸化炭素(CO2)排出を自動車単体で見るのは危うい。本来、CO2排出はサプライチェーン全体で見るべきものだ。発電を化石燃料に頼っている場合、その過程で多くのCO2を排出する。特に、東日本大震災以降、火力発電に依存している日本では、同氏の指摘は正論である。だからこそ、「ご英断に敬意を表します」という同氏のコメントに私は違和感を抱いたのだ。