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 米Apple(アップル)が計画している電気自動車(EV)「アップルカー」の生産を巡り、臆測が広がっている。提携先として最初に名前が挙がったのは韓国Hyundai Motor(現代自動車)だが、同社との交渉は頓挫したとも、アップルは日本の自動車メーカーと交渉中とも報じられている。いずれにしても自動車メーカーがアップルの下請けになるのか、注目されている。

 アップルと現代自動車の提携に関しては、「アップルが設計、現代自動車が生産」という役割分担だと報じられた。とはいえ、アップルが自動車全体の設計をできるわけではないし、するつもりもないだろう。現代自動車が実質的に設計し、生産したクルマをアップルブランドで売るとなれば、「アップルが元請け、現代自動車が下請け」という構図になる。

(出所:chesky/PIXTA)
(出所:chesky/PIXTA)

 もちろん、取引の世界では元請けと下請けの立場は対等だ。ただし、現代自動車は歴史的に、いわゆる垂直統合型のモデルで川上から川下まで自ら手掛けてきた。その同社が、果たしてアップルカーの生産だけを引き受けるか。これは、やや難しい判断だと私は思う。

 私は以前、日系自動車メーカーで勤務していた。当時も現代自動車の社員の勤務ぶりは有名で、かつての「モーレツ社員」をほうふつとさせた。輸出に頼るしかない韓国の企業として、何とか世界に自社ブランドを浸透させようという気迫が感じられた。

 その現代自動車も、激動する自動車業界において安泰ではない。自社ブランドの脅威となり得るアップルカーの生産を引き受けるかどうか、経営陣の中でも意見が割れていると想像できる。だからこそ、グループ傘下のKia Motors(起亜自動車)で生産を受託する案が浮上しているのだろう。起亜自動車であれば、現代自動車とは別企業の事業として一応は切り分けられる。

 自動車メーカーがアップルカーの生産受託に及び腰になるのは、生産だけではもうからないからだ。製造業には「スマイルカーブ」という概念がある。ものづくりのプロセスを、横軸に左から右に「企画・開発」「設計」「生産」「販売」「保守」と並べ、縦軸に利益率をプロットすると、両端(企画・開発、保守)が最も高く、中央(生産)が最も低いカーブになる。それが笑った口のように見えるのでスマイルカーブと呼ばれる。