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米国通商代表部が出した警告文書の表紙
米国通商代表部が出した警告文書の表紙
全36ページの文書。(出所:米国国務省Webサイト)
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 米国からの激しい一撃が日本のサプライチェーン関係者を揺るがしている。2021年7月13日に米国通商代表部(USTR)が出した警告文書だ。中国の新疆(しんきょう、シンチャン)ウイグル自治区に関するもので、「同地区に関わるな」と関係企業に強く促した。

 「同地区では強制労働などが認められるため、同地区からの輸入の自粛を米国のみならず同盟国にも強く求める」という内容となっている。あくまで警告の形を取っており、法的な拘束力はない。ただし、この方向性はこれからも踏襲されていくだろうし、私たち日本企業も認識しておく必要がある。

米国の新疆ウイグル自治区への警告

 ところで、なぜ日本のサプライチェーン関係者にも衝撃を与えているのだろうか。そこを見るために、報じられている内容だけではなく実際の警告文書を確認してみよう(以下、邦訳は筆者によるものであり、間違いや誤読は筆者の責任である)。

文書はここに掲載されている: https://www.state.gov/wp-content/uploads/2021/07/Xinjiang-Business-Advisory-13July2021-1.pdf

 当警告文書では、新疆ウイグル自治区は強制労働だけではなく、恒常的に投獄・不妊治療が行われているとした。さらに同自治区では17年から100万人以上のウイグル人などが迫害を受けており、ジェノサイド(大量虐殺)の可能性がある、と示唆した。米国当局がどれだけ定量的な確証を持っているかは分からないが、内部告発として「薬物強制接種」「性的虐待」「祈り行為の禁止」「中国共産党政府のプロパガンダの復唱」などがあったという。

 さらに、同地区の住民は個人情報を徹底的に管理され、身体情報や顔のスキャンデータを収集され、行動履歴が監視されるなどといったプライバシー侵害が起きているとした。ここでは中国のIT企業などが技術提供をしているので、その企業を支援しているとすれば、人権蹂躙(じゅうりん)に加担しているのと同義に見なされる。

 ここから派生する問題は何か。米国が挙げている内容は次の通りだ。

  • 不透明性:企業は透明性が求められるが、資金源、労働環境などが不透明になるため、現代の企業としてはふさわしくない
  • 異常な高収益:同地区の企業は相当な高収益を上げているが、社会保障費を十分に払っていないためだ。日本や欧米では労働者への高い社会保障費が問題になるが、それは逆に言えば労働者を保護しているといえる。不当な理由で高収益を上げている企業をのさばらせるのは問題である
  • 貧困:結果として労働者が低収入、貧困となるため、これは世界規模の目標としてもふさわしくない

間接関与も禁止

 その上で、新疆ウイグル自治区と直接取引している企業だけではなく、筆者のようなコンサルタントも注意すべきだとされている。仮の話だが、筆者が同地区で生産性向上のコンサルティングを手掛けているとする(当然だが現実には筆者は同地区でコンサルティングを行っておらず、訪問すらできない)。そして筆者が日本国内でもコンサルティングを行っているとすると、そのようなコンサルタントから日本国内であっても指導を受けるのは、間接的とはいえ人権蹂躙に加担する行為に相当する、としている。

 コンサルタントだけではなく、同地区に投資している投資家や、人材紹介業者、研究者なども対象となっている。現実的に、新疆ウイグル自治区の企業に投資・人材紹介をした中国企業があるとして、そこと間接的に取引をしている事業者は多いと想像できる。

 日本の暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)も、広く指定暴力団との関係を断つために、直接的・間接的な資金の流入を停止する。また、米国のドッドフランク法(ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法)も紛争鉱物禁止の名目で、コンゴ民主共和国の鉱物を使用しないように米国上場企業に求める。同国の鉱物を使用すると、間接的にテロ支援団体へ資金が流入してしまうためだ。

 話をUSTRの警告文書に戻す。間接的な関与とは、どこまでを包括するのだろうか。