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(出所:123RF)
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J-POPと日本企業の発展しすぎた独自仕様

 筆者はサプライチェーンのコンサルタントが本業で、調達・購買関連の専門教育を行っている。その傍ら、個人的な話だが、音楽誌にも原稿を書いている。それは趣味が高じ、さらに幸運に恵まれたにすぎない。

 読者はJ-POPという言葉を聞いたことがあるだろう。文字通り、日本のポップスだ。製造業では、ガラパゴスという言葉が有名になった。これは日本独自仕様が発展しすぎて、世界では通じない局地的な進化を遂げてしまった実情を指している。J-POPも同じく、特殊な方向に進んでいる。

 例えば、米国のヒットソングを聴いてみると2つか3つのコードで曲が構成され、リズムやメロディーで特徴付けている。そして、それらコードの繰り返しのなかで訴求性を高めている。一方でJ-POPは複雑なコード進行となっている。令和の現在でも独自の進化を遂げている。韓国のK-POPには比較的単純なコード進行が多く、それは他国での流行を狙っているからだろうか。

 ガラパゴス化することが悪いわけではない。しかし、それが日本でしか受け入れられないのでは寂しい。できれば世界への訴求性を持たせていきたい。

 このところ筆者はJ-POPをもじって、「J-企業」「J-営業」「J-調達」といった説明をする。これまでの日本は三密取引、すなわち密室、密談、密約がはびこっていたのではないだろうか。それがJ-営業、J-調達の特徴といえる。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大前に、なぜテレワークやテレビ会議が日本で進まなかったか。それは、録画されることに慣れていなかったからではないか、と筆者は仮説を持っている。それは三密取引であるが故に記録できるものではなかったから、ではないだろうか。

 例えば、企業の役員会議が録画されて公開されたとして、どれくらいの企業が耐えられるだろうか。また、役員と一般社員の会話が録画されていたとして、どれくらいの企業がパワハラだと認定されないで済むだろうか。また、評論家の故山本七平氏が言った「空気の支配」が大半の場合に存在して身動きが取れない日本の組織においては、いまだに前例踏襲を是とする。

日本ならではの先進創造法

 筆者がコンサルティング業務に従事して10年以上がたつ。面白いのは、どの企業も「先進創造」をうたっているものの、新たな取り組みを提案すると「他社の採用実績」を質問される点だ。他社よりも先に成果を求めようと思えば、むしろ他社が採用していない状況で取り組むのが最適だと筆者は思う。しかし実際には、他社が採用していない場合は、ほとんどの企業が採用してくれない。これは現実的にはかなりの障害だ。

 とはいえ、仕方がない側面がある。日本企業は人材が流動的ではない。だから、何らかの施策を採用する機会に社内から実績を聞かれた場合、安牌(あんぱい)を選ぶ。失敗したときに責任を問われた際に、他社の採用実績を語ればやむなしとなる。だから日本人に売るときに最高のキャッチフレーズは「他社も採用しています」なのだ。

 話を進める。

 筆者らはコンサルティング会社だが、ある時気づいたことがある。先ほど、他社の実例こそが一番の重要事項だと日本企業を揶揄(やゆ)した。それならば、むしろその性質を利用できるように、「他社」を自社にすれば、「他社」の役割を自社が実現すればいいのではないだろうか。

 つまり、こういうことだ。先ほどJ-企業は三密取引を特徴とする故に活動の記録に耐えられない、と言った。そして次に、他社での実例(記録)がなければ動きにくい日本企業の特徴を挙げた。それならば、自社で試して記録しておいて他社に推薦すれば、売り込みは最も簡単に進むはずだ。

 まず自社で全てを透明化した事業を推進してみる。そして成果を上げる。そうすれば自社という最も身近な成功事例が誕生する。

 例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)を考えよう。まず自社でDXを推進する。そして自社でうまく行けば、それをサービス化して販売する。それこそが最高の社内改善であり、新規事業開発だと筆者は信じている。それは図らずも、これまで有名になった米国のIT企業が実践してきた施策ではないだろうか。

 ダスキンの代理店として有名になった武蔵野(東京都小金井市)は、あまりに成績が優れていたので日本中の代理店から見学依頼があった。そこで、武蔵野は見学者を受け入れる代わりに入場料を取った。さらに、次に他社の社員の研修事業や育成事業を作った。これこそ見事な新規事業開発といえる。