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写真と本文は直接関係ありません(出所:123RF)
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 2022年に入って、メディアの話題の多くを新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の流行が占めている。原稿執筆時点(22年2月3日)では、まだ一部の地域を除いて陽性者が増加傾向にある。医療も逼迫しており、まだ予断を許さない。筆者のまわりの企業も、出張や会合にはネガティブになっている。

 サプライチェーンの分野でも、あまり良い話を聞かない。それはサプライチェーン上でのモノ不足が21年で収まらず、どうも22年も続きそうだからだ。

 そこでやや暗い予想にはなるものの、22年に供給が難しくなると予期されている4つの分野を取り上げたい。

(1)建設関係資材―着工件数増加で高騰続く

 世界的な景気回復と、その逆の材料費高騰と人手不足で建設業界は苦しんでいるといわれる。実際に、建設資材価格指数は上昇している。都市によるばらつきはもちろんあるものの、建設資材価格指数の全国平均を見ると、15年度を100としたときに、全国では20年度平均が109.1、22年1月は138.7となっている。

* 建設資材価格指数(法人経済調査会)

 日本の住宅着工戸数は20年に比べて21年は増加した。また物流施設などの建設ラッシュも続いている。もっとも日本は少子高齢化のため、これから急増していくとも思えない。ただ、建設資材価格は世界との関係で見る必要がある。

 実際に米国では今後も建設資材の高騰を見込んでいる。また資材調達のリードタイムが長くなるのに伴って一部の企業は計画を修正せねばならないとしている。ただ、米国では利上げが予想されるため、建設ラッシュは緩和の可能性もある。状況を分析しながら、各社とも建設資材の調達がボトルネックにならないように注視している状況だ。

* 米国の住宅着工件数ほか

(2)プラスチック―「不可抗力事項」に備えて在庫見直し

 日本経済新聞が22年1月末、「国産ナフサ7年ぶり高値 10~12月、合成樹脂も一段高」と発信した。

* 日本経済新聞電子版22年1月28日付

 21年の初めに米国テキサス州を大寒波が襲い、電力需要の急増や風力発電設備の凍結などにより大規模な停電が発生。これらの影響で素材メーカーからのプラスチック材料の供給が不足した。米国では、ほぼ1年にわたって供給と需要のアンマッチが生じ、価格も20年比で50%も上昇している。

 この連載でも何度か触れたように、需要側(調達する側のメーカー)はプラスチックの在庫強化に動いている。ただし何年分も在庫を持つわけにはいかず、異常気象によるリスクもまだ払拭できていない。

 関係者を驚かせたのが、この21年の出来事に関して多くの供給側企業がフォースマジュール(Force Majeure)を宣言したことだ。フォースマジュールは不可抗力事項といって、予期せぬ災害などが起きた際には契約責任を免れるとする決め事だ。対象は契約内容にもよるが、災害や疫病、暴動、戦争など多岐にわたる。

 もちろん、フォースマジュールの宣言に当たっては、不可抗力事項発動の原因となった事象と供給不能との因果を説明する必要がある。ただ需要側から見れば、「異常気象だからできないものはできません」と言われれば打つ手がない。昨年のプラスチック不足問題は、異常気象の時代における供給停止問題もサプライチェーン関係者に突き付けた。