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新型コロナ感染拡大前の深圳・華強北電気街(2019年7月) (出所:日経クロステック)
新型コロナ感染拡大前の深圳・華強北電気街(2019年7月) (出所:日経クロステック)
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いまだに続く新型コロナの影響と各国の状況

 ウクライナ危機で隠れているのだが、中国での新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンが、サプライチェーンに多大な影響を及ぼしている。

 アジアでは新型コロナへの感染者が増加しており、例えば韓国では1日あたり60万人を超えた(2022年3月16日)。これは世界で最悪の水準だ。ベトナムも急上昇カーブを描いている。米Google(グーグル)のニュースサイトで世界の感染状況を見ても、この2カ国が突出している。この2カ国は新型コロナの感染拡大が始まってからしばらくは、感染抑止の優等生として論じられていたが、ここへ来て感染者が急増している状況だ。

* Googleニュース「新型コロナウイルス」

 世界各国の感染状況を見ると、欧州はまだまだ多く、米国や中国、インドは落ち着いているように見える。特に中国は、報告された感染者数が真実に近いなら、いまだに感染抑止の優等生といえる。その手法は徹底したゼロコロナ戦略であり、感染者が出ると直ちに都市全体を封鎖、あるいは機能を制限する。

 この強権国家独特の政策は、新型コロナ感染拡大の当初には先進国の保健当局から羨望のまなざしを向けられた。中国の都市は団地が多く、都市への入退出のルートも限られているので封鎖しやすかったとの指摘がある。

 前述の韓国やベトナムも含めて、さまざまな要因が複雑に絡み合う感染症対策においては、各国の政策が正しかったのかの評価は後年の判断に委ねざるを得ない。

中国のコロナ封じ政策

 現在、中国はコロナを封じようと躍起になっており、大々的な対策を講じている。何人かの症例が出たあと、長春(吉林省)、深圳(広東省)、東莞(同)、廊坊(河北省)など多くの都市を封鎖。トヨタ自動車は長春の工場を稼働停止、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン)も同様に停止した。米Apple(アップル)社製品の製造で知られる台湾Foxconn Technology Group(フォックスコン、鴻海科技集団/富士康科技集団)も深圳工場を止めた。

* 深圳における事実上のロックダウンは21年3月21日に解除になった。フォックスコンの工場の再開も報じられた。

 長春には多数の自動車や自動車部品の製造工場が密集しており、各社とも事態を見守るしかない。一部の地区では、作業者を工場の敷地内にある寮の入居者に限った上で、製造作業を認める例もある。ただ部品調達の遅れや、労働力不足は否めない。

 物流については、中国各地で当局は高速道路の出入り口を封鎖し、ドライバーにPCR検査での陰性証明を求めている。さらに運んだ先でも、中国の港では輸送の遅れからトラックの長蛇の列ができており、商品は倉庫に積み上がっている。コンテナ当たりの出荷コストは引き上がった。世界の物流に悪影響を及ぼしている。

 先ほどフォックスコンの例を挙げたが、特に深圳は中国の製造の多くを担っている。フォックスコンは他地域での代替生産の可能性を示唆したものの、あまりに巨大な深圳工場を完全に代替するのは、不可能とはいえないまでも非常に難しいだろう。

 深圳には中国Tencent(テンセント、騰訊控股)や中国Huawei Technologies(ファーウェイ、華為技術)もある。深圳から世界への発送に大混乱が起きており、中国国内でも迂回ルートを取る必要があるため、商品配送の遅延が目立つ。

 ところで封鎖解除の基準はあるだろうか。深圳当局は新しい感染者が14日間出ないことなどをロックダウン解除の条件としている。なかなか高いハードルだ。中国のゼロコロナ政策故の混乱は中期的に影響が及ぶ場合があると考えるほうがいいかもしれない。

* 深圳政府在線(深圳政府オンライン)