“中国寸断”は思考実験か現実的検討か
現在、多くの企業が新年度開始を迎えようとしている中、調達部門は新たな緊急の課題に頭を抱えている*。
きっかけは2022年2月のウクライナ危機の勃発だ。しばらく、各社共にロシアとウクライナからの直接・間接の調達品や金額についての調査に追われた。そして現時点でも影響の大きさが判明していない企業もある。また取引先も未曽有の事態であるために情報収集が終わらない。物流の滞りは目に見えて増えており、影響が軽微でないのは確かだ。影響がおぼろげながら見えてきた企業は、ロシアとウクライナの代替先を見つけようと奔走している。
さて、冒頭で挙げた、調達部門が頭を抱えている「新たな緊急の課題」はロシアとウクライナではない。経営トップから、次に中国が経済制裁を受けたときのダメージと代替策について緊急に検討するように指示されているのだ。
これは経営トップにとっては当然の指示といえる。考えたくはないが、台湾有事を想定したものだ。
先だって22年3月18日、米中首脳会談があった。あれも両国はロシアとウクライナを目前の話題としながらも、台湾を想定して議論を交わしたに違いない。
筆者は中国が台湾に侵攻する可能性は現時点では低いと思う。当面は台湾にいる親中派の勢力を高める方向で活動するのではないだろうか。ただ、侵攻はあくまで確率が低いとはいえても、可能性がゼロだと断じる人は誰もいないだろう。
社長、中国取引やめるってよ
ところで経営トップとしては台湾有事に備えるのは当然であっても、その対策を投げかけられた調達部門としては悩みが多い。
ロシアは中国を共産国家あるいは社会主義国家の舎弟と考えているかもしれない。しかし、実際の経済規模は中国がロシアの10倍はあり、立場は逆転している。さらに日本は中国との国交正常化と日中友好の推進から始まり、中国の経済成長と軌を一にして良くも悪くも中国依存を続けてきた。言葉は悪いが、ロシアの影響くらいだったら企業人にとっても想像がつく範囲内だが、中国の影響は大きすぎて想像すらできないのだ。
もちろん経済制裁といっても、今回のウクライナ危機におけるロシア側への制裁のように徹底したものなのか、軽微なものかで議論は異なる。重要物資の日本から中国への輸出を禁じるだけならば影響は少ない。ただ、全面的な取引禁止かつ、ロシアで見られるように外資系企業の撤退までを予見すべきであれば、だいぶ様相は異なってくるだろう。
いきなり「中国取引やめるってよ」という想定はもはや、日本のビジネス関係者の想像力を超越している。