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(出所:123RF)
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 「156億円!?」。おそらくサプライチェーン・調達関係者は驚愕(きょうがく)したのではないか。

 米ニューヨーク証券取引所に上場する米モトローラ・ソリューションズ(Motorola Solutions)は先日、2022年第1四半期の決算報告を行った。同社は、誰もが知る通信事業者で、公共セクターに製品やサービスを提供している。

 同社は22年第1四半期に約19億米ドル(1ドル=130円として約2470億円)の売上高をたたき出し、営業利益も約2億4000万米ドル(約312億円)を稼いだ。立派な結果であり、さらに業績は予想を超えていた。もちろん経営陣は油断してはいないが、部材不足や原材料の高騰、さらには市場の不安定さがあった中でのこれらの結果には、おおむね満足しているようだ。

* モトローラ・ソリューションズの決算(株探)

 ただ、1年前と比べると営業利益率は低下している。同社の製造原価を押し上げているものは半導体と物流コストの上昇だという。物流コストの上昇にはガソリンやドライバーの人件費高騰などがある。ただ半導体については、世間ではコストの問題というより、そもそも入手できないこと自体が問題になっている。

 そこで決算会見の内容を見ていると面白い記述が目に飛び込んできた。生産を維持するために、サプライチェーン・調達関連の予算を積み上げているという。その金額はなんと年間約1億2000万米ドル(約156億円)に上るらしい。予算では上期に約1億米ドル、下期に約2000万米ドルを使うと設定されている。単純に四半期の売り上げを倍にして半年間分を38億米ドルと考えても、それに対して1億米ドルを使うわけで、かなりの金額といえる。

* モトローラ・ソリューションズの決算会見

 ではその巨額をどのような用途に使うのだろうか。「半導体メーカーから直接買えない場合に使う」(同社)という。プレミアム=割増金、と表現されているが、オルタナティブな流通経路を指す。つまり、正規ルートではない、他の流通市場からの調達を意味している。

 「いや確かに、そうやって調達するしかないのは分かるけど、さすがに156億円というのは……」と日本のサプライチェーン・調達関係者は、どう整理していいか分からない心のざわつきを感じたはずだ。

何があっても調達実現を貫徹

 さらに同社は、積極的に物流の手段を変更。海上輸送を空輸に切り替えている。各国ともに海上輸送は混雑ぶりが周知の状況となっており、中国では新型コロナウイルス感染症への対策による各都市のロックダウンなどもあり、荷役の作業も滞っている。航空運賃がウクライナ危機で高騰しているのを承知で、空輸すべしというわけだ。他企業よりも早く(速く)半導体関連の部材の入手に成功し、それによって重要顧客かつ事業規模の大きい公共セクターに完成品を供給できたという。

 もっとも同社は、半導体の不足問題を単に対症療法のみで解決しようとしているわけではない。より多い種類の半導体を既存の代替として使えないか模索したり、設計したりしている。その上で、追加費用を支払ってまでも半導体を確保しようと血眼になっているわけだ。

 現在ではゲーム、自動車、スマートフォンなどの各業界が半導体という「金を生むチップ」を奪い合っている状態だ。同業同士での奪い合いもある。それを解消してくれるのであれば156億円の価値がある、というのが同社の判断だ。

 同社は「半導体の供給不足は、これからも続く可能性がある」と見ている。