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(出所:123RF)
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ドローンと自動運転は先かもしれないが……

 2015年あたりから、筆者は日経ビジネスオンラインなどでサプライチェーンにおけるドローン活用について述べてきた。当時は新たな潮流だったし、オンラインショッピングによる貨物量の激増という問題への救世主ともみられたことから楽観的に紹介した。

 ドローンは最近では、ウクライナ危機でもその有効性に注目が集まった。ただ筆者が描いた、ビジネス上の物流への応用はどうか。実証実験は繰り返されているものの、一般的といえる状況にはなっていない。法規やセキュリティーの問題があり、多くの国でドローンが飛び回って日常的に配送する光景を目にするのはかなり先になりそうだ。

 自動運転技術が物流に及ぼす効果も、盛んに叫ばれたもののまだ自動配送車が行き交う時代にはなっていない。従来の物流の問題、例えばトラックドライバーの深刻な不足や高齢化、過大な労働といった問題が自動運転によって解決すると説く記事もあった(そして筆者もその片棒を担いだ)が、道半ばと言わざるを得ない。

 過熱気味だったこのような技術への期待感がやや遠のく一方で、現実的な観点から注目を浴びるようになったサービスがある。米Google(グーグル)の「Last Mile Fleet Solution」だ。このサービス(アプリケーション開発キット提供)によって「正しい住所の取得、配送ルートの計画、ドライバーへの効率的な道案内、配送の進捗状況の把握、車両のパフォーマンス分析といった、ラストワンマイル配送における全段階を最適化できる」としている。

* Last Mile Fleet Solution

 現在、新型コロナウイルスの感染拡大がやや落ち着いて人の移動は盛んになってきており、モノの移動も多様な人々によって支えられている。ギグワーカーのような個人が担う配送もある。モノを素早く届けられれば、モノを受け取る企業や消費者にとって喜ばしいだけではなく、配送を担う人々にも恩恵がある。時間とコストを節約でき、労働条件の改善にもつながるからだ。

Google Maps使用の拡張性

 かつて、テレビの情報番組で「Googleストリートビュー」の負の側面について特集されたことがある。いわく、風景が細部まで写っているために空き巣が下見に使っているという。監視カメラの有無、保有自家用車の台数、路地裏の様子、逃げ道の有無、フェンスの高さ、表札の文字……。ボカシを入れてほしいと要請できるものの、法律的に公開を禁ずるものではなく、全てが情報化されオープン化される現代のネガティブな側面だという。

 もちろんそれは否定できない。だがポジティブな面もある。例えば、「Google Maps(グーグルマップ)」には莫大な利用者がいて、グーグルは収集した情報を基に地域の人の多さや道路の混み具合などを表示している。ユーザーが使えば使うだけ、比例的にGoogle Mapsは使いやすく正確になり、移動に最適な経路を提案してくれる。

 東京から大阪まで貨物を運ぶとする。主たる手段は貨物列車か高速道路かくらいで、迷うほどの選択肢があるわけではなく、妥当なものを選べばそれでよい。問題はラストワンマイルだ。目的地近くの物流センターからどうやって最終の顧客先に届けるかが問題だった。前述のドローンも自動運転もここへの活用を狙ったものだった。とすると、Google Mapsのデータをラストワンマイルに活用しようとする動きは当然の帰結といえるかもしれない。

 Google Mapsを活用したLast Mile Fleet Solutionでは配送ルートの計画や貨物の追跡ができる。渋滞の発生も即時に検知して新たなルートを提案する。交通量の分散にも寄与する。技術者向け資料によれば、Uber(ウーバー)の運行状況を調べられるように、貨物を運ぶトラックがどこに位置するかを荷主と消費者が確認可能だ。これによって消費者側の満足度も向上するとしている。

* 技術者向け資料

 ところでLast Mile Fleet Solutionは、Google Mapsの優位性を生かしたサービスだ。ただ、公平に付け加えれば、ラストワンマイルのサービスを提供するのはグーグルだけではない。他にも効率的なルートを指示したり、ITで物流をマネジメントしたりするサービスは存在する。

 グーグル自身、このサービスに力を入れる理由がある。もちろんサービスが拡大すれば収益が上がるのだが、[1]世界中の個人が活用するだけではなくエンタープライズ(企業用途)で使ってくれればデータが多層的になる、[2]トラックで運ぶモノの情報を把握すればさらにデータ活用の幅が広がる、[3]EC(Eコマース)で商品を買った消費者がただちにモノを受け取ってECの利便性を感じれば、リアル店舗よりもグーグルのサービスを利用する機会が増える、といった点だ。

 そして配送を依頼する企業や手掛ける企業としては、グーグルなどのサービス利用によりラストワンマイルを改善すれば、企業のブランディングにもつながる。