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「Tesla Model Y」(出所:Tesla)
「Tesla Model Y」(出所:Tesla)
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 「取引先が解決しようとしないならば、我々が解決するまでだ」。何という力強い言葉だろうか。米Tesla(テスラ)CEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク(Elon Musk)氏の言葉だ。そして、この言葉はマスク氏の力強さ、さらにテスラのサプライチェーンにおける優位性をも示している。

イーロン・マスク氏の卓見

 テスラは先日、第2四半期の決算を報告した。同社の決算報告についてはしばしば幾つかのサプライズが含まれるため、当連載でも注目し内容を報じてきた。2022年は中国・上海での歴史的なロックダウンによって経済が停滞したが、それでもなお製造の強化によって製造数の確保につなげるようだ。サプライチェーンは地獄の様相だったが、その地獄ゆえに将来につながる思考の基になったとみられる。

 今回の決算のポイントは、マスク氏が半導体調達について述べたところだろう。自動車はマイコンをはじめ多数の半導体を必要とする。そしてその半導体が供給危機にあり、入手が困難になっている。そこでマスク氏は、半導体で動かすソフトウエアを大幅にアップデートする、と表明したのだ。

* テスラの決算説明会(2022年第2四半期)

 このソフトに関する施策は2つある。1つ目は、ソフトの修正により、同じところで違う半導体を使えるようにする「マルチソース」だ。

 一般に「複数社購買」や「マルチソース」と呼ばれる対策では、部材を1種類に限るのではなく複数の部材を活用できるようにして、部材や取引先を複数にしてリスクを分散する。王道の施策だが、半導体では「複数社購買」や「マルチソース」はなかなか難しいといわれる。ところが、テスラはそれをやった。

 そして2つ目は、1つの半導体に複数の機能を持たせるようにしたこと。「複数社購買」や「マルチソース」のために複数種類の半導体を使用可能にしても、調達数量を分散する分だけ個々の半導体についてはボリュームメリットがなくなる。取引先1社あたりの調達量が減ってしまうから、価格面などでサプライヤーに対する訴求性も減じる。

 2つ目の施策を報告するテスラの表現がなかなか興味深い。「現代ではスマートフォンやPCは、通話だけできるデバイスではないし、表計算だけできるツールではない。さまざまな機能を有する。そのマルチユース性を半導体にももたせるべきだ」という。

 これらは、サプライチェーンにおいては極めて面白い施策といえる。1つの半導体に課す役割を増やして、製品に使う半導体の種類を減らし、それにより供給不足を解消しようとしているのだ。

 例を挙げると、基板に2種類の半導体を使用しているとする。それぞれ100円で、合計200円。そして、この2種類の半導体を1個で代替できる半導体が300円とする。通常は200円対300円だから、前者に軍配が上がる。

 しかし半導体の入手困難時代にあっては、前者は2つの調達先について困難が生じて、それぞれ対応しなければならなくなる。対して、後者では困難が生じても1つだけだ。極端に考えれば、100の半導体をすべて調達しなければならない場合と、1つの半導体を調達する場合を比べてみればいい。どちらが容易かは自明だ。