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 「ずっと付き合う気があるのか?」

 こう問われたことを記憶している。新たな取引先=サプライヤーを社内で提案した際のことだ。筆者は電機メーカーと自動車メーカーで勤務経験があり、どちらでも新規サプライヤーを提案した際は、常に問われた。そのサプライヤーと中長期的に取引を継続する覚悟があるのか、と。

 日本企業と欧米企業の違いは何か。さまざまな回答があると思う。しかしサプライチェーンの観点からは「日本企業は欧米と比べて多くのサプライヤーと付き合っている」が答えだろう。日本は全企業中、中小企業がほとんどを占める。大企業も無数の中小企業と付き合っている。

 欧米と日本で、同じ売上高で同じ利益の会社があったとする。それでも、恐らく内製比率が異なる。簡単にいえば、欧米企業は内製比率が高く、日本企業は外注(調達)比率が高い。だから日本企業は多くの外注先や調達先と付き合っている。

 この外部依存比率についてはいくつかの先行研究で明らかになっているが、日本企業に外注先や調達先と交流を深める意図があったというよりも、高度成長期の急激な売上高増に対応するために、自社増強よりも外部の力を借りる方法を選んだ結果としての側面が大きい。

脱中国は夢か

 日本企業の外部依存の高さについて、高度成長期に原因を求めた。しかし、考えてみれば海外企業の外注先・生産委託先の活用による水平分業は日本企業の戦略の後追いともいえる。例えばファブレス企業は、日系企業の戦略を徹底したともいえるのではないか。

 ただし外部依存が大きくなれば、当然ながらリスクも大きくなる。その例は米Apple(アップル)だろう。アップルは周知の通りiPhoneの組み立てを中国国内の拠点=ホンハイ(台湾鴻海精密工業、Foxconn)の中国工場に依存している。

 ホンハイは、iPhoneについてベトナムでの生産拡大でアップルと合意している模様だが、大部分は中国だ。ベトナムで並行生産するといっても90%以上は中国で生産されている。

 例えば、米国の対中国貿易のデータを見てみよう。2017年に就任したドナルド・トランプ前米大統領のイメージは対中国強硬派であり、中国との貿易を地政学的な観点から抑止したのが記憶に新しい。実際の結果はどうだろうか()。

図 米国の対中国輸出入
図 米国の対中国輸出入
2017年1月から2022年8月まで。(米・国勢調査局のデータを基に筆者作成)
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* United States Census Bureau(米・国勢調査局)

 データで見ると、輸入は上昇下落を繰り返しながらもほぼ横ばい。そして、輸出も横ばいといっていい。つまり強硬的な政策はともかく、米国の対中国輸出入を見てみると、やはり中国依存を避けられない。少なくとも、離れ難い関係と思える。