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夕暮れのフィリピン・マカティ(本文と直接関係ありません)(写真:123RF)
夕暮れのフィリピン・マカティ(本文と直接関係ありません)(写真:123RF)
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フィリピン現地法人と日本の本社

 「ここは暑いでしょう。暑いから、もう何でも良い気がする」

 5年前のフィリピン・マカティ。11月だというのに30℃を超える気温で、薄めのジャケットを羽織っているだけで汗が滴ってきた。筆者は某社のフィリピン法人へ視察に来ていた。

 視察のあと、マカティの夕日が映えるレストランでフィリピン法人の日本人とビールを飲みながら、あれこれと話をした。その内容のほとんどは覚えていない。しかし、1つ強く印象に残っている話がある。

 氏の仕事の多くは、日本の本社からやってくる社員をアテンドすることだった。空港へ迎えに行ってホテルへ案内し、フィリピン法人の事業所に連れていく。そして夜は食事。休日は観光にも付き添う。現地スタッフに任せてもいいが、出張者の多くは英語を解さない。

 「毎日のように何人もの日本人が訪問してきます。彼らはフィリピン法人をサポートしてくれる。フィリピン人がダメなわけではないのですけれども、日本人の手助けが必要なんですね。彼らの出張費は日本の本社が負担しています。あの費用をフィリピン法人に計上したらどうなるか。うちに限らずあちこちの会社でフィリピン法人は赤字になるんじゃないかな」。

 氏にとって筆者は珍しい外部の訪問者だったから、そんな話をしたのだろうか。同じ話を本社の社員にもしているのですか、と筆者が質問したかは思い出せない。ただこの話は税金にも関わる。ガバナンスの強化、あるいは正しい労務費の配賦や費用分担によって、現地法人の経営は化けの皮が剥がれる、と氏は予想したわけだ。

 ただその問題より、筆者が覚えているのはその夜の蒸し暑さだ。レストランでは女性従業員が陽気に歌いながら通り過ぎた。なるほど、この暑さでは、もう何でも良い気になるのかもしれない。