米中貿易摩擦や新型コロナウイルス禍など、これまでのサプライチェーンの常識が通用しない事態が相次いで生じている。調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則氏がサプライチェーンの“新常識”を解説する。
以前の連載「米中新冷戦時代のサプライチェーン」
未来調達研究所 取締役

米中貿易摩擦や新型コロナウイルス禍など、これまでのサプライチェーンの常識が通用しない事態が相次いで生じている。調達・購買業務コンサルタントの坂口孝則氏がサプライチェーンの“新常識”を解説する。
以前の連載「米中新冷戦時代のサプライチェーン」
米Tesla(テスラ)の決算報告を聞いて、「おっ」と声を発した人は多いかもしれない。2022年4月20日の第1四半期報告についてだ。アナリストたちの予想を上回る素晴らしい業績だったが、それだけではない。バッテリーにニッケルやコバルトを含まないクルマが半数になった、というのだ。
大企業であれ中小企業であれ、円安によって輸入コストが高くなるのは間違いがない。多くの企業では調達品を値上げする場合には稟議(りんぎ)書が必要だ。以前のように、値上げを避けるためにどうするかという方針ではもはや対応しきれない。いかに値上げ幅を圧縮できるか、あるいは値上げに効率的な対応ができるか、に焦…
現在、多くの企業が新年度開始を迎えようとしている中、調達部門は新たな緊急の課題に頭を抱えている。ロシアとウクライナではない。経営トップから、次に中国が経済制裁を受けたときのダメージと代替策について緊急に検討するように指示されているのだ。
ウクライナ危機で隠れているのだが、中国での新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンが、サプライチェーンに多大な影響を及ぼしている。
ロシアのウクライナ侵攻から一週間が経過した(原稿執筆時点)。停戦協議はうまくいっておらず、事態の収束はまだ見込めない。しかし、この戦争の結末がどうであれ、世界中で網の目のようにつながったサプライチェーンには大きな影響を与える。しかも、それは長期間に及ぶだろう。
SDGsでは貧困撲滅や人権蹂躙(じゅうりん)撲滅をテーマとする。そのとき、抑圧されている人たちを“身近”に感じられるか。これは人びとがSDGsに本気になるかどうかに影響を及ぼすように、筆者には感じられる。
サプライチェーンの分野で、あまり良い話を聞かない。サプライチェーン上でのモノ不足が21年で収まらず、どうも22年も続きそうだからだ。そこでやや暗い予想にはなるものの、22年に供給が難しくなると予期されている4つの分野を取り上げたい。
「どうしても入手せなあきません」。昨年から半導体入手についての窮状を教えてくれる顧客が増えてきた。筆者はそもそも半導体に特化したサプライチェーンの専門家ではないが、顧客は何とか打開案を探っているのだろう。現場の調達担当者から役員クラスまで、半導体入手のために奔走している。
サプライチェーン関連で最近「VA/VE(Value Analysis、Value Engineering)の再ブーム」とでもいうべき動きが見られるようになっている。「人権やSDGs、脱炭素などに注目が集まる」→「さらにコストもかかる」→「ならばその分のコストを他で低減するしかない」というわけだ。
筆者はサプライチェーンのコンサルティングを生業(なりわい)としている。基本的にはコンサルティング先の企業に訪問するが、テレビ会議の機会も多くなってきた。テレビ会議ならキャンセルしやすい…というわけではないだろうが、2021年は会議のリスケジュールが相次いだ。
このところあちこちから共通して聞こえてくるのが「他国からモノがまったく入りません」との声だ。スエズ運河での座礁が世界を騒がせたのは今年の3月のこと。その影響はまだ続いている。さらに、世界的な需要増、年末商戦、湾岸地区でのストライキなど、物流上の明るい話題がない。半導体が入手できないため、生産を止め…
筆者はサプライチェーンのコンサルティング会社に属している。コロナ禍以後は、「働き方改革」に関する相談はピタリとなくなった。増えたのがコスト削減の相談や、在庫に関わる相談だ。コロナ禍以前は、「働き方改革」「AI(人工知能)/RPAの活用」といったテーマの問い合わせが多かったのだが。
昨今、企業でSDGsの活動が盛んになってきた。かつてはイメージ先行だった側面も否めなかったが、現在では企業が社会的に存続する条件になっている。筆者が専門とするサプライチェーンでは、取引先で人権が蹂躙(じゅうりん)されていないかをチェックする機会がある。
米Tesla(テスラ)が全く信じられない発表をした。「我々の開発チームは、半導体不足から引き起こされる製造の問題について対応するために、これまでにない取り組みを開始している。我々のエレキとファームウェアのチームは、19もの新たなコントローラーを用意し半導体不足に対応するために鋭意、設計や検証に取り…
日本経済新聞などで先日から報じられている「国境炭素税」が、サプライチェーン関係者の中で話題となった。国境炭素税は、細部が未決定なこともあって世の中にあまり理解されていない。しかし、この国境炭素税は企業のサプライチェーンを再考させる可能性を秘めている。
このところ筆者はJ-POPをもじって、「J-企業」「J-営業」「J-調達」といった説明をする。これまでの日本は三密取引、すなわち密室、密談、密約がはびこっていたのではないだろうか。それがJ-営業、J-調達の特徴といえる。
1848年に米国カリフォルニア州で始まったゴールドラッシュ。関わったほとんどの人々が夢破れた。現地で日用品などの価格が急騰し、とてもペイしなかったからといわれる。一方で成功した人もいた。彼らは金を掘りに来た人たちへのビジネスを展開した。最も有名なのは、人々に丈夫なズボンを販売したドイツからの移民、…
価格を下げるだけなら交渉によって取引先に譲歩してもらえばよいかもしれない。しかし、交渉ではCO2は削減できない。CO2排出量は動かせない事実だから、サプライチェーン全体のCO2を削減しようと思えば、実際のCO2排出量を本当に減らしてもらうしかない。
このところ、筆者の本業(サプライチェーン・コンサルティング)で会議をしたりWeb討議をしたりする休み時間に「そういえば、他社はSDGs(持続可能な開発目標)で何をやっているんですか」と聞かれる機会が増えた。さまざまな企業の企画部門がSDGsを考慮したメッセージを発している。しかし、それはあくまでメ…
米国からの激しい一撃が日本のサプライチェーン関係者を揺るがしている。2021年7月13日に米国通商代表部(USTR)が出した警告文書だ。中国の新疆ウイグル自治区に関するもので、「同地区に関わるな」と関係企業に強く促した。