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 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ついに緊急事態宣言の対象になった東京都。その対策情報をまとめたWebサイトが注目を集めている。「行政らしくない」出来栄えのサイト誕生の背景にあるのは、的確なデータ整備やアジャイルな開発体制。同サイトこそ東京都がデジタル技術の活用で進める「東京DX」のシンボルだ。

 2020年3月3日深夜に開設された東京都の「新型コロナウイルス感染症対策サイト」が国内外から注目されている。検査陽性者の状況や検査実施状況、陽性患者の属性、陽性患者数、都営地下鉄の利用者数の推移…。様々な情報を図や表をふんだんに使って分かりやすく表示する。

 各種のオープンデータをダウンロードすることも可能だ。情報を匿名化したうえで、二次利用しやすく加工して無料公開している。日本語に加えて英語やハングル、中国語の簡体字や繁体字などでも閲覧できる。

東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト(2020年3月31日午後8時現在)
東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト(2020年3月31日午後8時現在)
(出所:東京都)
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 開設してから4月7日まででのページビュー(PV)数は1200万超、ユニークユーザーは490万人。3連休明けの3月23日、小池百合子知事が「この3週間はオーバーシュートが発生するか否かの大変重要な分かれ目」と発言した日からPVの伸びが著しい。

わずか1週間の“爆速”開発

 東京都の新型コロナ対策サイトでとりわけ話題を集めたのが、ソースコード共有サイト「GitHub」で同サイトのソースコードを公開し、他の行政機関や開発者などが同様のサイトを作れるようにしている点だ。ソースコードをオープンにするのは行政機関のサイトとしては異例。既に台湾や米サンフランシスコ市など、国内外約50の地域の新型コロナ対策サイトに東京都のソースコードが使われている。行政機関が制作したサイトもあれば、エンジニアが自主的に作ったものもある。「天才プログラマー」と称される台湾のオードリー・タン(唐鳳)デジタル担当政務委員(閣僚級)がこのGitHubに“降臨”し、「繁体中文」とあった表記を「繁體中文」に変更してほしいとリクエストしたことも世間の関心を集めた。

 東京都のサイト構築を率いたのは宮坂学副知事だ。ネット最大手ヤフーの社長を退任した後、副知事に転じた。

 宮坂副知事の指揮の下、わずか1週間という“爆速”でサイトが構築されたことも注目を集めた。2月26日、都の新型コロナウイルス感染症対策本部の会議で小池知事が今後の集中的な取り組みとして「広報体制の強化」を打ち出し、新型コロナについての専門ホームページ立ち上げを指示した。「新型コロナは東京都だけの問題ではない」と最初から他の行政機関や開発者が使えるようにソースコードやデータはオープンにする計画だった。