東京都が進めるデジタル変革プロジェクトの全貌が見えてきた。便利で安全、多様性に満ちた都市の実現へ、官民でデータを共有し活用するための通り道、「データハイウエー」の整備がカギを握る。次世代の高速道路開通のためには、立ちふさがる2つの壁を崩す必要がある。
宮坂学副知事の指揮の下、わずか1週間で誕生した東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト。ソースコードやデータをオープンにして従来の“お役所仕事”のイメージを覆した。迅速な開発を可能にしたのは、サイトの開発を受託したCode for Japanの宇野雄氏が振り返るように「きちんと成形したデータ」を東京都が渡したためだ。
行政機関がホームページなどで統計資料を公開しても、紙の印刷を前提にPDFやワード文書の形式にしていることが多い。データフォーマットも同じ行政機関でも部局によってバラバラである場合も珍しくない。
実は東京都は2年前からオープンデータの整備を進めてきた。保有するデータを民間企業などが2次利用しやすいようにするためだ。「2年前からデータフォーマットの統一や各部局との調整といったデータ整備のノウハウを蓄積してきたことが、新型コロナ対策サイト構築に生きた」と東京都戦略情報推進本部ICT推進部の天神正伸情報通信技術担当課長は話す。
東京都は2017年12月に「東京都ICT戦略」を策定。「都が保有する膨大なデータも活用しながら官民が連携してICT活用を進め、東京の成長へとつなげる」という方針を掲げた。地域の行政課題解決のために行政はオープンデータ化を推し進め、民間はそのデータを用いて課題解決に有用なアプリを作る、といった施策をうたっている。民間企業にもオープンデータ化を促す。
こうした基本的考え方を土台に、公共施設や都民サービスのデジタルシフトを図り、東京という巨大都市のデジタルトランスフォーメーション(DX)をなし遂げる。街のDXには3つの柱がある。「セーフ シティ」は災害時の気象や被災情報を把握し被害の軽減や早期復興を図る。「ダイバーシティ」は誰もがどこでも自身の状況に応じて必要なサービスを受けられる状態。タブレット端末やパソコンを活用した学校の授業や、島しょ地域での遠隔医療などが具体策だ。「スマート シティ」は自動運転やキャッシュレスの普及など、生活に密着したサービスをデジタル化する。