全2051文字
PR

 「間違いなく開発が止まる」――。2020年4月7日19時、日本政府が「緊急事態宣言」を発令した。新型コロナウイルスの感染が拡大する7都府県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県)を対象に、外出自粛規制がより強化される。同宣言が製造業に与える影響を問うと、神奈川県に開発拠点があるメーカー幹部は、新規製品の開発業務に支障を来すと即答した。

緊急事態宣言の対象となる都府県
[画像のクリックで拡大表示]
緊急事態宣言の対象となる都府県
(作成:日経クロステック)

 この緊急事態宣言により、企業は在宅勤務を一層加速しなければならない。安倍晋三首相は企業に「出勤を最低でも7割減らす」ように要請。在宅勤務をこれまで実施してきた企業でも、多くは間接部門が中心だ。開発部門の在宅勤務を積極的に進めている製造業は、IT事業を主力とするNECなどごく一部。新型コロナ騒動が勃発し、必要に迫られるまで「テレワークは行っていなかった」(キヤノン)企業は多い。だが、企業内感染を防ぐために、今後は開発部門を含めて極力、社員の出勤を抑えなければならない。

* NECでは開発を含めて全社でテレワークがかなり進んでいる。社員は在宅で可能な仕事は出勤せずに対応するのが前提。2018年には全社員が回数制限なくテレワークが可能な制度を導入。2019年にはコアタイムのないフレックスタイム制度を採り入れた。同社は、東京五輪の開催に備えて東京都が企業にテレワークを要請したのを受けて、2016~7年ごろからテレワークを開始した。導入当初に生じたインフラ面や業務の進め方といった問題をこの数年で解消してきたという。

 開発部門で在宅勤務が進まなかった最大の理由は、出勤しなければ試作品を作れず、試験や評価ができないからだ。高性能コンピューターや大型の機械、試験設備、専用治具など製品開発に必須の設備は出勤しなければ使えない。実際、「技術開発拠点では設計ツールや実験設備などの関係でテレワークに限界がある」(日産自動車)、「開発系は出勤している社員が多い。CADや実験設備など現場にいないと進まない業務がある」(ダイハツ工業)といった声が上がる。そこで、「開発現場をよく知る上司の判断に委ね、技術者の出勤を必要最小限に抑える」(トヨタ自動車)という方針で、開発業務の継続と新型コロナへの感染防止との両立を図る企業が増えている。

 開発業務でも、もの(ハードウエア)ではなくソフトウエアの開発は比較的テレワークを進めやすく、既に在宅勤務を実施している企業は多い。会社から貸与されたパソコン(PC)でプログラミングを行い、社内の高性能コンピューターにリモートでログインしてコーディングするといった一連の業務をこなせるという。

緊急事態宣言が与える影響
[画像のクリックで拡大表示]
緊急事態宣言が与える影響
同宣言の対象となる都府県に開発拠点を持つ主な企業に聞いた(トヨタ自動車を除く)。(作成:日経クロステック)