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 新型コロナウイルスの感染拡大が製造業の企業活動に大打撃を与えている。先が見通せない難しい局面ではあるが、収束後の「アフターコロナ」を見据えた手を打つ企業が未来の競争を制する。製造業はどう変わるべきか。2020年3月に、大手自動車メーカーの経営コンサルティングを担うドリームインキュベータで執行役員に就いた田代雅明氏に聞いた。

(聞き手は窪野 薫=日経クロステック)

田代 雅明(たしろ・まさあき)。東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻修了後、ドリームインキュベータ(DI)に入社。入社後は10年以上にわたり、自動車、通信、IT(情報技術)、エレクトロニクス、商社などの業界において、成長戦略立案や、業界を横断した新規事業・新組織の立ち上げに従事。2020年3月から同社執行役員。(撮影:日経クロステック、2019年2月)
田代 雅明(たしろ・まさあき)。東京工業大学大学院社会理工学研究科社会工学専攻修了後、ドリームインキュベータ(DI)に入社。入社後は10年以上にわたり、自動車、通信、IT(情報技術)、エレクトロニクス、商社などの業界において、成長戦略立案や、業界を横断した新規事業・新組織の立ち上げに従事。2020年3月から同社執行役員。(撮影:日経クロステック、2019年2月)
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新型コロナの影響で苦境が続く製造業はアフターコロナに向けてどう変わるべきか。

 製造業にとって急務なのは業務のデジタル化である。もちろん、今に始まったことではなく、昔からデジタル化の必要性は叫ばれている。11年の東日本大震災やタイを襲った洪水、18年に関西で猛威を振るった台風など、製造業の企業活動に影響が出るレベルの災害が起きるたびに議論は進んできた。さらに、昨今の働き方改革や労働力不足など、多様な視点でデジタル化を推進する動きはあった。

 この動きは、新型コロナの影響を受けてさらに加速する。ひとえにデジタル化といっても切り口はさまざまだ。モデルベース開発(Model based Development;MBD)やCAE(Computer Aided Engineering)を活用した研究開発のデジタル化をはじめ、サプライチェーンや生産の部門にもデジタル化の技術を組み込む必要が出てくる。

 日本の製造業の多くではデジタル化の準備が不足していた。海外勢と比べると日本メーカーは「すり合わせ」(相互調整での設計開発)を重視する傾向が強く、化学業界や自動車業界などではMBDやCAEの導入が遅れている。導入はしていても、実験評価時の1つの材料にすぎないケースもある。あくまで現物でのすり合わせを重視し、デジタルによる開発を単独で進めている企業は日本に少ない。そのため、新型コロナの影響を受けて開発が止まる事例が出ている。

 さらに、セキュリティー面の改善が必要となる。一般の従業員にはアクセス権限が付与されておらず、リモートでの情報入手や、専用ソフトウエアの操作などができない場合が多々あるようだ。現場に出向かなければデータにアクセスできない環境では、作業効率が低下する。

 一方で、海外の化学メーカーなどでデジタル化に注力してきた企業は新型コロナの影響をあまり受けていない。IT(情報技術)環境の整備に先んじて投資し、在宅でのシミュレーションソフトの稼働や、遠隔での実験を当然のように進めている企業は強い。製造業にとってデジタル化がアフターコロナの明暗を分ける。

新型コロナの影響はグローバルのサプライチェーンに及んでいる。

 製造業の中でも各業界によって事情は異なるが、共通するのはサプライチェーンに負の影響が出ていること。特に東南アジアや欧州で生産している電装系部品で影響が大きいようだ。これらは、自動車や工作機械といった日本の競争力が高い製品の部品として多く採用されており、完成品工場の稼働停止を招くボトルネックになっている。