「現在、無条件に使用可能となった特許は30万件を超える」。こう語るのは、「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」の立案者である山崎寿郎氏だ。
同プロジェクトは、新型コロナ対策の技術を開発する企業や研究機関に対し、特許などの知的財産を無償開放することを呼びかけるもの(図1)。2020年5月11日の段階で、キヤノンや島津製作所、トヨタ自動車、日産自動車といった日本を代表するメーカーなど計24団体が賛同を表明した。
同プロジェクトが立ち上がったのは2020年4月3日。京都大学発のベンチャーであるジェノコンシェルジュ京都の最高経営責任者(CEO)を務める山崎氏とキヤノンが中心になって発足した。
「知的財産に関する新型コロナウイルス感染症対策支援宣言」の発起人は、キヤノンや島津製作所など医療系事業を手掛ける企業の常務執行役員などに加え、トヨタやホンダといった自動車メーカーの知的財産部長など計24人。発起人の所属する企業のほとんどが同宣言に参画しており、全企業のうち17社は特許権や意匠権、著作権などの使用に制限を設けていない。無償開放の期間は、世界保健機関(WHO)が新型コロナ感染症のまん延について収束を宣言する日までとしている。
参画企業の中で、特に目立つのがキヤノンだ。子会社のキヤノンメディカルシステムズを含めて、保有する8万5000件の特許の使用許諾を出した。キヤノンの広報担当者は「肺の異常を検査する際に使うイメージング技術や、MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピューター断層撮影装置)などのヘルスケア関係などの特許を新型コロナ対策に役立ててほしい」と述べた(図2)。
トヨタも、2020年5月1日に同宣言への参画を表明。「新型コロナ対策であれば、特許使用などに制限をかけていない状態。トヨタ生産方式(TPS)や、遠隔操作で生活を支援できる『ヒューマンサポートロボット(HSR)』技術などを活用していただけたら」と同社の広報担当者は語った(図3)。