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崩れた需給バランスが産業構造変化の引き金に

 世界的な新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済への影響の大きさが見え始め、電子産業でも人々の巣ごもり生活による需要の激減によって、需給バランスが一気に崩れた。これまでは生産ラインの能力アップによる供給過剰が価格低下を招き、その価格低下により市場が拡大するという需給のシーソーゲームでバランスが取れていた。今回の事案を境にして需要と供給の双方が大きく影響を受けた結果、これまで保たれていた微妙なバランスが一気に崩れ、競争原理のベースとなっていた面積と量の拡大というビジネスモデルが変化する可能性を含んでいる。

 くしくも、感染が世界に拡大し始めた3月に、韓国Samsung Display(サムスンディスプレー)は、LCDの工場を閉鎖して量子ドット(QD)技術を搭載した新型OLEDディスプレーの開発に注力することを顧客に正式通知した。同様にLG Display(LGディスプレー)も、20年中にLCDの工場を閉鎖することを年初に公表している。これらの決定は、新型コロナ禍の発生する以前の昨年からの既定路線であり、その背景には爆投資で既にLCDパネルの主導権を中国に握られてしまい、もはやLCDでは利益を出せないという状況がある。この結果、22年には、中国のLCDパネル生産量は世界の80%強を占めて寡占状態になる。LCDのビジネスに見切りをつけた韓国勢はOLED化を急ぎ、付加価値を付けた商品でハイエンドマーケットを狙う。いうなれば勝負の土俵を、量から質へ転換したわけだ。

 一方、中国メーカーも、今後の市場収縮やパネル価格のさらなる低下で、LCDのビジネスは厳しくなっていくだろう。その結果、さまざまな変化が予想される。1つは業界再編の加速である。業界を主導する中国工業と信息化部も以前から再編によって産業の効率化を図りたいという発言をしており、今回の事案がそのきっかけになるかもしれない。2つ目は、中国メーカーもこぞってOLEDへシフトする方向が予想される。LCDの爆投資に続いてOLEDでも既に20ライン近くの投資が行われており、Flexible OLEDの量産も始まっている。現段階での技術的な差や歩留まりなどの問題を指摘する声もあるが、既に韓国勢の背中は見えており、追いつくのは時間の問題と言える。

 加えて、OLEDの先に来るMicro LED(マイクロLED)がある。SamsungもQD技術を使った新型OLEDの先に、マイクロLEDディスプレーを検討している。マイクロLEDは世界中の多くの企業が開発に注力しているが、中国には既に多くのLED関連企業が存在し、新たなビジネスチャンスを狙って虎視眈々(たんたん)と開発を進めている。マイクロLEDが実用化されれば、ディスプレー産業のゲームチェンジャーとなる可能性がある。