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 新型コロナウイルスの感染拡大が自動車メーカーの業績に大打撃を与えている。苦しい状況の中、各社は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」への開発投資を継続している。その“本気度”が収束後「アフターコロナ」の競争力を左右すると考えているからだ。ところが、製造業の事業変革に詳しいアクセンチュアの太田陽介マネジング・ディレクターは「CASEだけでは競争に勝てない」と指摘する。

(聞き手は窪野 薫=日経クロステック)

太田 陽介(おおた・ようすけ)。慶応義塾大学卒業後、2000年にアクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年より戦略部門に異動。製造業やハイテク産業、国内外のサプライチェーンにおける企画・設計を歴任。現在、同社ビジネス コンサルティング本部 サプライチェーン&オペレーション プラクティス日本統括マネジング・ディレクター。(出所:アクセンチュア)
太田 陽介(おおた・ようすけ)。慶応義塾大学卒業後、2000年にアクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年より戦略部門に異動。製造業やハイテク産業、国内外のサプライチェーンにおける企画・設計を歴任。現在、同社ビジネス コンサルティング本部 サプライチェーン&オペレーション プラクティス日本統括マネジング・ディレクター。(出所:アクセンチュア)
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自動車メーカー各社は引き続きCASEに注力していくようだ。

 競争力の確保のためにCASEは重要だ。だが、今後技術開発がCASEだけでとどまっているような自動車メーカーは、熾烈(しれつ)な競争下で打つ手がなくなるだろう。アフターコロナの世界で見えてくるのは、人がどのように街で暮らすべきか。すなわち、都市の再デザインだ。そうなると、CASEは都市を構成する技術のほんの一部でしかなく、単体ではビジネスが成り立たない。

 新型コロナウイルス感染症流行は、都市への一極集中という人間の動態シナリオを抜本的に変える。人口の過半数が都市に住むことの危険性を認識させ、従来型の都市デザインの弱さを浮き彫りにした。

 「このままの都市づくりではまずい」という意見が多数出てくることは当然だ。ソーシャルディスタンス(社会的距離)を厳守しつつ、モビリティーによる移動をうまく制御しながら暮らすことになる。アフターコロナの移動を担うつもりなら、自動車メーカーこそ都市デザインに向かうべきだ。

トヨタ自動車(以下、トヨタ)がまさに都市デザインに乗り出している。

 実際、その動きはある。国内の自動車メーカーでいえば、トヨタは相当有利なポジションにいる。静岡県裾野市に「Woven City(ウーブン・シティ)」と名付けたコネクテッドシティーを建設し、まさにアフターコロナの世界観をつくり出そうとしている。

 ただ、コンセプトだけで万事うまくいくものではなく、都市デザインには莫大な資金が必要だ。そのための資本提携を進め、“大同団結”という形で各社協力のエコシステムを形成しようと、トヨタ社長の豊田章男氏が明確に宣言した。

 都市の再デザインを実現しようと意気込むトヨタと、CASEという世界観の中で単独で動いている企業とでは競争の次元が違い過ぎる。大多数の自動車メーカーは、どうしても車両の製造販売が軸の事業態勢になっている。確かに、一歩進んだ技術トレンドとしてCASEがあるが、やはり自動車という枠組みの中でユースケースをつくろうとする。

 トヨタのように、自動車メーカーが街づくりを担うという発想を持たないと勝負にならない。提携先も、自動車にまつわる企業だけではなく、街づくりを得意とする建設企業と組むなど、これまでとは異なる発想や業界を取り込んだ議論を進めるべきだ。