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 新型コロナウイルスの影響に多くの製造業がもがき苦しんでいる。しかし、危機は好機にもなる。これまでの常識にとらわれず抜本的な事業変革を進めた企業こそが、収束後の「アフターコロナ」に栄光をつかむ。そのためには今、製造業には何が必要か。同業界の事業変革に詳しいアクセンチュアの太田陽介マネジング・ディレクターに聞いた。

(聞き手は窪野 薫=日経クロステック)

太田 陽介(おおた・ようすけ)。慶応義塾大学卒業後、2000年にアクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年より戦略部門に異動。製造業やハイテク産業、国内外のサプライチェーンにおける企画・設計を歴任。現在、同社ビジネス コンサルティング本部 サプライチェーン&オペレーション プラクティス日本統括マネジング・ディレクター。(出所:アクセンチュア)
太田 陽介(おおた・ようすけ)。慶応義塾大学卒業後、2000年にアクセンチュア入社。テクノロジー部門を経て2011年より戦略部門に異動。製造業やハイテク産業、国内外のサプライチェーンにおける企画・設計を歴任。現在、同社ビジネス コンサルティング本部 サプライチェーン&オペレーション プラクティス日本統括マネジング・ディレクター。(出所:アクセンチュア)
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製造業のデジタル化はさらに重要なものになる。

 これまでも、コンピューター上で現実世界と同じモデルを構築する「デジタルツイン」という技術は存在していた。同技術が必要であることは明確であり、新型コロナを受けて重要度が増すことは間違いない。その方向性に反対する者もないはずだ。

 ただ、導入には課題もある。取り扱う情報をデジタルツインの環境に移行していく中で、現実の情報を正しく反映しているのか、そのロジックの確認に膨大な工数を要することだ。意気込みはあっても、現実の工数の多さに直面すると一歩踏み出せない傾向が強まる。「やはり今年優先すべきは目の前のコストダウンだ」というように、ここまで先送りにしてきた実態がある。

 それが、新型コロナによってついに変わり、取り組まざるを得ない状況になった。工数をどのように確保するのか、経営者としては判断が難しいところだろう。ただ、今始めなければグローバルの競争に取り残される。そう警鐘を鳴らしたい。

体力のある大企業の方がデジタル化を進めやすいのか。 

 企業の体力、つまり資金力の大きさは重要だ。しかし、誤解してはならない。デジタル化は基本的に自社のみでは実現できず、体力があればうまくいくというわけではない。日本の製造業の多くはこれまでこの本質に気付けずにいた。

 デジタル化を目指すなら、社外の力を借りることを「必要悪」と捉えてはいけない。これまで、開発・設計部門は自社にとってコアコンピタンス(中心的な競争力の源泉)であり、「聖域」であるとの考えがまん延していた。同部門に外部の血を入れることを悪と捉え、「よく分からない哲学」に従ってデジタル化を強引に内製で進めようとしてきた。

 無理やり内製で解を求めても、そんなものは出るわけがない。体力の有無ではなく、どの技術・事業を外に出し、どれを中に入れて残すのかを明確に判断できる企業がデジタル化で躍進する。同じ業界の競合であろうと、意思決定が明確にできるか否かで大きな差がつく。

アフターコロナに向けて製造業に求められる対応は。

 新型コロナのような危機的状況下では部品サプライチェーン(供給網)に課題が生じる。部品メーカーの工場や輸送システムが止まり、製品を構成する「鍵」となる部品が工場に届かなくなる。これが何より懸念すべき事態だ。