「事業利益†はゼロ円」(三菱重工業)、「赤字の可能性がある」(川崎重工業)、「なんとか黒字にできるように頑張る」(IHI)──。日本の重工業3社の2021年3月期(2020年度)の業績は、極めて厳しいものとなりそうだ。自動車業界などと並び、新型コロナウイルスの影響をまともに食らう業界と言える。
3社は2020年3月期(2019年度)連結決算で、既に新型コロナの負の影響を受け始めた。川崎重工業の2019年度の売上高は1兆6413億円で、営業利益は620億円だった。航空宇宙システム事業(航空機やジェットエンジンなど)と車両事業(鉄道車両や除雪機械など)の増収で、売上高は前年度比で465億円増加した。一方で、営業利益はモーターサイクル&エンジン事業(2輪車、4輪バギー車、多用途4輪車、水上バイク、汎用ガソリンエンジンなど)と精密機械・ロボット事業(油圧機器や産業用ロボットなど)の減益により、前年度比で19億円減った。
IHIの2019年度の売上高は1兆3865億円で、営業利益は607億円だった。産業システム・汎用機械事業で中国市場向け車両用過給機の販売が減少したことや、新型コロナの影響を受けた中国事業の操業低下や売り上げの減少が響いて、売上高は前年度比で969億円減った。営業利益は前年度比で216億円減少した。ボイラー・原動機の減収や、民間用航空機エンジンの整備で見つかった検査不正問題への対策費用、車両用過給機の欧州市場における販売台数の減少などが減益要因となった。
それでも、2019年度はまだ新型コロナの影響は軽微だったと言える。2020年度は新型コロナの負の影響がさらに深刻化する。川崎重工業は、旅客需要が急減している航空宇宙システム事業や、外出規制と個人消費の低迷が続くモーターサイクル&エンジン事業が「多大な影響を受ける」と見込む。IHIも、民間用航空機エンジン事業が旅客需要の急減や航空会社の経営悪化の影響を、車両用過給機事業が自動車需要の減少や自動車メーカーの生産調整の影響を受けるとみている。
こうした状況から、両社とも赤字か黒字かというギリギリの事業展開を余儀なくされるというのが2020年度の見通しである。