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 「経費や投資支出の徹底的な削減を目指す」――。ヤマハ発動機の日髙祥博社長は、2020年5月29日にオンラインで開いた同年第1四半期(1~3月)の決算会見でこう表明した。新型コロナウイルスの感染拡大が世界の製造業へ打撃を与える中、ヤマハ発は不要不急の出費を減らして経営基盤を安定させる構えだ。

ヤマハ発動機の日髙祥博社長
ヤマハ発動機の日髙祥博社長
(撮影:日経クロステック、2018年12月)
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 日髙社長が示した新型コロナ対応の方向性は大きく3つ。第1に、従業員やステークホルダー(利害関係者)の生命を最優先し、事業所や工場の一時閉鎖、テレワークや時差出勤などの就労環境の整備、社会支援活動に取り組むこと。

 第2に、経費や投資の削減を含む、事業損失の極小化を目指すこと。同時に、世界的な需要の増減に合わせた生産調整に踏み切る。

 そして第3に、パンデミック(世界的な大流行)に対応した事業継続計画(BCP)の水準向上だ。新型コロナ禍、および新型コロナ収束後の「アフターコロナ」において、従業員の労務における生産性の改善と、サプライチェーン(部品供給網)の機動性を高めることを目指す。

 同社が発表した第1四半期の業績は新型コロナの影響を大きく受けた。売上高は、前年同期比8%減の3959億円にとどめたが、営業利益は同29%減の254億円、当期純利益は同66%減の96億円と落ち込んだ。感染拡大の影響が顕著になってきた3月に販売台数が世界的に減少。2輪車を含む「全事業で減益」(日髙社長)となった。

 一方で、事業の成長に不可欠な設備投資額や研究開発費は増額した。2020年第1四半期の設備投資額は前年同期比59%増の121億円、成長戦略費用を含む研究開発費は同9%増の295億円だった。今期以降、投資支出の削減を目指しながらも、2輪車や小型4輪車におけるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)領域への投資は継続していく構えだ。

 今回の決算会見では、将来展望についての質問が日髙社長に多くぶつけられた。会見での主なやりとりは以下の通り。

コロナ禍、そしてアフターコロナを見据え、消費者の価値観はどう変化していくと考えるか。

日髙氏:アフターコロナの世界では、特に移動に対する価値観が大きく変化しそうだ。この現象はグローバルで起こる。例えば、東南アジア諸国連合(ASEAN)で主流の「バイクタクシー」は、利便性の高さからこれまでビジネス規模が拡大してきた。ただ今後、人と人とが接触を避けるようになると、バイクタクシーのような密接状態になる移動サービスは敬遠される可能性が高い。

 一方で、人々は自分自身で所有する2輪車や小型4輪車などの「パーソナルモビリティー」を欲するはずだ。これは、アフターコロナの世界でヤマハ発がポジティブに捉える部分である。