全2070文字
PR

 新型コロナウイルスの影響で、製造業の開発・設計業務は在宅勤務などの「リモート対応」を余儀なくされた。ウィズコロナ/アフターコロナ時代の働き方やグローバル開発体制の在り方とはどのようなものなのか。CADなどの設計ツールを手掛ける米PTCの日本法人であるPTCジャパンのソリューション戦略企画室ディレクター・フェローの後藤智氏と、同社CADビジネスデベロップメント ディレクターの芸林盾氏に聞いた。(聞き手は高野 敦=日経クロステック)

新型コロナが製造業に与える影響をどう見ているか。

後藤氏 技術系職場でも、設計管理のような管理業務では在宅勤務が比較的苦にならないと聞いている。PLM(Product Lifecycle Management)システムを導入している企業では、自宅からでも部品表(BOM:Bill of Materials)などにアクセスできるので、あまり問題になっていない。

芸林氏 一方、CADを扱う業務は在宅勤務への移行による影響が大きい。多くの日本企業がVPN(Virtual Private Network)を介してVDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ環境)で社内サーバーにアクセスしてCADを利用しているが、「動作が遅い。どうにかならないか」という相談が寄せられている。ほとんどはVPNを含むネットワークが原因と考えられる。

左が芸林氏、右が後藤氏(ビデオ会議の模様を日経クロステックがキャプチャー)
左が芸林氏、右が後藤氏(ビデオ会議の模様を日経クロステックがキャプチャー)

 日本では設計業務のために2~3割が出勤しているようだが(編注:取材は2020年5月25日に実施)、米国ではほとんど在宅勤務でこなせているという。米国では「ネットワーク環境が貧弱で仕事にならない」という報告はほとんどない。その分だけセキュリティーポリシーが甘いのかと思っていたら、そうでもない。ネットワークインフラに差があるのではないか。

 実際、我々は3次元CADソフト「Creo」の全世界における起動回数を集計しているが、新型コロナの感染が拡大してからもそれほど減っていない。CADを使った業務が在宅勤務でもできることは、数値でも示されている。

 2019年10月にPTCの買収でラインアップに加わったSaaS(Software as a Service)型CADの「Onshape」は、その傾向がさらに顕著だ。クラウドベースということもあり、新型コロナ前後で起動回数が全く変わっていない。

CADオペレーションに限らず開発・設計業務全般を見たときに、新型コロナの影響による遅れなどはありそうか。

後藤氏 図面の承認など業務ワークフローがデジタル化されていないと、遅れが出やすいようだ。

デザインレビュー(DR)についてはどうか?

後藤氏 新型コロナ以前は「DRルーム」などと呼ばれる大部屋に集まるのが一般的だった。それを今どうしているのかまでは把握できていない。

 もともと日本企業では、日本や北米、欧州など多拠点で開発しているときの連携方法が十分に整備されていなかった。「グローバル開発」の重要性は昔からいわれていたが、日本企業はピンときていなかった。新型コロナを契機に、拠点間でデータや進捗を共有することの重要性に気づき始めた。