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 2020年5月に国内自動車7社が発表した20年3月期決算。トヨタ自動車が他社を寄せ付けず、2位のホンダに営業利益で2兆円近い大差をつけて圧勝した。10年前、日産自動車を加えた3社の間に大差はなかった。コロナショックで、実力差はさらに広がる可能性がある。「トヨタ1強時代」はどこまで続くのか。

自動車7社の営業損益(20年3月期)。日経クロステックがまとめた。
自動車7社の営業損益(20年3月期)。日経クロステックがまとめた。
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 営業利益はトヨタが2兆4429億円、ホンダが6336億円の黒字、日産が405億円の赤字だった。10年前(10年3月期)はそれぞれ1475億円、3637億円、3116億円の黒字とそれほど差はなかったが、この10年でトヨタと残る2社とで大差がついた。

 量の拡大と距離を置いたトヨタに対して、拡大路線を志向した日産とホンダがつまずいた形だ。2社はこの期間、思ったように販売を増やせない中で固定費が大きく膨らんだ。今は後始末に追われている。

 固定費が3社の明暗を分けたことを象徴するのが、トヨタが今期(21年3月期)営業利益で5000億円という予想を発表したことだ。8割の減少幅は壊滅的に思えるが、ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹氏は「赤字にしないという意思表示」と前向きに読み解く。自動車7社で予想を開示したのはトヨタだけ。むしろ自信の表れというわけだ。

「RAV4」(出所:トヨタ)
「RAV4」(出所:トヨタ)
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 リーマン・ショックが起きた09年3月期、トヨタは4610億円の営業赤字に陥った。00年代の拡大路線で固定費が膨らんだことが大きい。一方でリーマン・ショックを上回る危機と言われる今期に黒字を確保できれば、10年前からトヨタが大きく成長した証左となる。中西氏はこの10年で固定費を抑えた「リーン(引き締まり無駄が少ないこと)な体制になった」ことが、今期の黒字予想公表につながったと評価する。

 ただし5000億円という数値については、「かなり保守的」(JPモルガン証券の岸本章氏)との見方がある。為替の前提で大きく変わるが、足元の1米ドル=108円を上回る状況であれば、岸本氏は営業利益で1兆円を超える実力があると分析する。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一氏は、1兆5000億円水準を予想した。

 来期(21年3月期)以降を見据えて、今期は1兆円を超える水準にはしないという見方もあった。東海東京調査センターの杉浦誠司氏は、持続的な成長を重視するトヨタの思想に基づくと、「(自動車メーカー全体が沈む)今期は大きな利益にこだわる時期ではない。むしろ今期の好決算は、来期以降のハードルを高めるとトヨタは考えるのではないか」と予想する。あえて1兆円以下にとどめたい意向が働くというのだ。