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 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて世界的にクルマの需要が蒸発している。トラックやバスなどの商用車も例外ではない。国内2強の日野自動車といすゞ自動車が発表した2020年3月期の決算、および21年3月期の業績見通しは、その厳しい現状を映しだすものだった。

 ただ、両社は逆境下だからこそ、先進技術の開発投資では攻めの姿勢を崩さない。新型コロナ収束後の“アフターコロナ”に向けて、「種まきを着実に推進する」(日野の下義生社長)。

商用車メーカーは電動化などの先進技術の開発に注力する。写真はいすゞ自動車のコンセプト電気自動車(EV)トラック「FD-SI」。(撮影:日経クロステック)
商用車メーカーは電動化などの先進技術の開発に注力する。写真はいすゞ自動車のコンセプト電気自動車(EV)トラック「FD-SI」。(撮影:日経クロステック)
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 「生産調整や固定費の大幅削減、投資の見直しに取り組む」――。日野の下義生社長は20年5月に開いた同年3月期の決算会見でこう表明した。新型コロナによる需要減少に対して、経営基盤を安定させる守りの姿勢に聞こえる。ただ、実態はそうではない。

 日野は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など先進技術の開発に引き続き注力していく。同社の研究開発費と設備投資費は共に年間600億円規模。21年3月期は縮小を見込むが、新領域への投資は絞らず、メリハリをつけて選択と集中を進める。稼働率が低い工場の設備更新を見送るなどして出費を減らす。

 いすゞも同様の姿勢を示す。同社の片山正則社長は、20年5月に開いた決算会見で「21年3月期は投資を減らすが、開発費を削減したり、開発にブレーキをかけたりすることはない」と語った。研究開発費は前期比31億円減の950億円を見込むが、削減するのは開発部門の一般経費部分にとどめる。設備投資費は前期と同水準の810億円を予定する。

 両社とも、新型コロナの影響が20年3月ごろから本格化。影響は第2四半期(7~9月)までは続くとの見方が強く、年度内に世界需要が回復するかどうかは分からない。まさに「急ブレーキがかかっている」(日野の下社長)事業環境の中、先進技術の開発に注力するのは、物流業界を取り巻く危機感が背景にある。

協業で開発投資を分担

 物流業界は深刻な運転者不足に陥っている。この課題は年々顕著になっており、ある大手物流会社の幹部は「乗り手がいなくてトラックを動かせない」と嘆くほどだ。そのため、運転者の負担を減らす支援技術の搭載や、将来的な自動運転技術の開発が商用車メーカーにとって急務となっている。さらに、自動運転だけではなく電動化も不可欠だ。欧州の一部の都市では、ディーゼルエンジン車の乗り入れを禁止した。環境規制に対応するため、各社は商用EVのラインアップを増やそうと開発を急ぐ。

 「仲間づくりが極めて重要になっている」――。日野の下社長は長年にわたってこう訴えてきた。その狙いは、協業や提携で開発投資を分担し、1社当たりの負担を減らしながら開発効率を高めること。トヨタ自動車グループに属する同社は手広く協業や提携を進め、既にトヨタを含めて大きく3グループとの協業を実現している。