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 「ピロン」――。ある平日の朝、スマートフォンに1件のメッセージが届いた。画面には「7時55分登校。体温36.5℃。マスク着用」とある。春から小学校に上がった娘の登校通知だ。どうやら、今日も何事もなく学校に着いたらしい。「これで安心して仕事に行けるな」。父親はこうつぶやいて会社に向かった。

非接触の顔認証・体温測定装置
非接触の顔認証・体温測定装置
中国・京東方科技集団(BOE Technology Group)の日本法人BOEジャパンが2020年5月に発売した。(撮影:日経クロステック)
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 娘が通う小学校の出入り口には、タブレット端末のような装置が2台据え付けられている。登校した生徒は順番で端末に顔を向け、カメラ撮影による顔認証で到着を確認する仕組みだ。マスク着用でも顔を認証でき、同時に体温も計測できる。これら一連の機能は全て非接触で完結する。新型コロナウイルスの感染防止策の1つだ。

 手掛けるのは、液晶パネル世界首位である中国・京東方科技集団(BOE Technology Group)の日本法人BOEジャパン。既にグローバルで展開中の同装置を日本市場向けに調整し、2020年5月から販売を始めた。学校の他、公共施設や病院、飲食店から数百台単位の引き合いがあるという。

 装置はタブレット端末の上部にカメラを、下部に台座を取り付けた形状をしている。特徴は、99%以上の精度で瞬時に本人かどうかを判別できること。カメラで顔を撮影し、250カ所ほどの特徴点と最大3万人分の登録データを照合する。顔の下半分をマスクで覆った場合でも、輪郭や顔上部の特徴から登録済みの本人か否かを見分ける。認識アルゴリズムの改良で実現した。

 液晶ディスプレーやカメラは一般的な性能のものを採用した。液晶ディスプレーは「IPS」方式で、解像度は800×1280、画面サイズは8インチである。上下・左右の視野角がそれぞれ178度と広いのが特徴だ。横から見ても表示画面が認識しやすい。

パネルやカメラは調達で

 BOEは世界首位の液晶パネルメーカーであるが、今回は自社の量産品を使っていない。液晶ディスプレーやカメラなどは、全て中国に拠点を置く協力メーカーから調達する。完成品への組み立てまでを協力メーカーが担う。日本に輸出し、BOEジャパンが日本市場向けのシステムに更新して販売する体制だ。

 協力メーカーの比較的安価な量産品を活用することでコストを抑え、開発期間も数割短縮した。価格は10万~15万円で競合他社の半額ほど。その他、専用クラウドの使用料として月額300~500円が必要になるが、合計金額も他社より安価に設定。個人商店や美容院など、導入コストを理由に二の足を踏んでいた顧客層を開拓する。