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 2020年3月末に国内で商用サービスが始まった「5G」(第5世代移動通信システム)が出はなをくじかれている。新型コロナウイルスの影響で5G契約の新規獲得もままならないほか、基地局建設の人員確保に不透明感が漂っているからだ。世界でも標準化作業の遅れや電波割り当ての延期など5Gに逆風が吹く。だが本来5Gはこうした危機にこそ役立つ手段だ。危機をチャンスに変える取り組みが欠かせない。

5Gの展開計画を発表するNTTドコモの吉澤和弘社長
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5Gの展開計画を発表するNTTドコモの吉澤和弘社長
出所:NTTドコモ

新型コロナが5Gを直撃、計画見直しも

 「新型コロナウイルスの影響でショップは5G契約の新規獲得どころではない。コロナがいつ収束するのかで基地局を建設するための人員確保が見通せない。場合によってはエリア拡大計画が後ろ倒しになる可能性もある」。携帯大手関係者はこのように嘆く。

 韓国や米国の1年遅れで20年3月末に始まった日本の5Gサービス。開始時点でドコモやKDDI、ソフトバンクの大手3社ともにエリアは限定的で、東京・山手線内はおろか丸の内近辺でも5Gでつながる場所は少ない。本来であれば、はるかに先を行く米国や韓国、中国に追いつかなければならない重要な局面で、新型コロナウイルスに水を差された格好だ。

ドコモは5Gの有望なユースケースとしてスポーツ観戦を想定。しかし新型コロナウイルスの拡大で裏目に
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ドコモは5Gの有望なユースケースとしてスポーツ観戦を想定。しかし新型コロナウイルスの拡大で裏目に
出所:日経クロステック

 NTTドコモは5Gの最初の有望なユースケースとしてスポーツ観戦などを想定。20年東京オリンピック・パラリンピックの会場などスタジアムを中心に5Gエリアを用意した。しかし東京オリンピック・パラリンピックは延期となったうえ、主要なスポーツ試合も軒並み開催が先送りになった。同社の戦略は不幸にも裏目に出た。

 NTTドコモは1年後の21年3月末に全政令指定都市を含む500都市にエリアを拡大。その時点である程度、面的に5Gエリアを広げる計画だった。しかし新型コロナウイルスの影響で、その計画に不透明感が漂い始めている。

 当初、5Gで利用できる周波数帯はエリア拡大に不向きだ。NTTドコモの吉澤和弘社長は「初年度の5Gの契約目標は、LTEの初年度と比べて若干少ない二百数十万件」と、控えめの数字を示していた。新型コロナウイルスの影響拡大は、その数字すら見直しを余儀なくされる可能性がある。多くの人々は新型コロナウイルスの影響拡大による景気悪化を恐れて、消費支出を抑えるだろう。現状の携帯電話契約は不可欠であるものの、エリアも不十分な現段階の5Gは不要不急とみなされかねないからだ。