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 極めて限られたエリアからのスタートとなった日本の「5G」(第5世代移動通信システム)サービス。5Gインフラ展開を加速する切り札として浮上してきたのが、複数の事業者で鉄塔やインフラをシェアする設備共用だ。KDDIとソフトバンクは2020年4月、設備共用のための合弁会社「5G JAPAN」を設立。日本でほとんど進まなかった設備共用が5Gを契機に動きだした。将来的にNTTと、それ以外の2軸に国内競争が変化していく転機になる可能性がある。

KDDIとソフトバンクの合弁会社「5G JAPAN」
KDDIとソフトバンクの合弁会社「5G JAPAN」
5G展開加速のために連合を組んだ。(出所:5G JAPAN)

きっかけはMWC帰国便

 関係者によるとKDDIとソフトバンクの協業の発端は19年2月、スペイン・バルセロナで開催された世界最大の携帯見本市「MWC19バルセロナ」からの帰国便だったという。KDDIの田中孝司会長とソフトバンクの宮川潤一副社長がたまたま同じ便となり、これからのネットワークの在り方について意気投合した。

 「日本の地方に鉄塔を3本建てる時代ではない。2面2強のネットワークを作ったほうが日本のためになるのではないか」。両社の関係者は打ち明ける。両社が保有する基地局資産を相互に利用することで、基地局の整備期間の短縮やコスト削減効果につなげられる。諸外国では単独でインフラ展開した場合と比べて、設備共用によって3〜4割コストを抑えられるという実績があるという。

 特に効果が高いのは、KDDIとソフトバンクのどちらかだけに基地局があるようなエリアだ。基地局展開で最もコストと手間がかかるのが、基地局設置場所の確保と鉄塔など基地局を建てる場所の工事だ。国内携帯電話事業者の設備投資額のうち、約4割がこうした鉄塔部材や工事の費用という。KDDIとソフトバンクのいずれかが整備した鉄塔に相乗りすることで、4割のコストをそのまま削減できる。

重い投資負担、自前主義から転換

 国内の携帯大手はこれまで、自前設備を競争の源泉と捉えてきた。4Gの時代までは、つながりやすさが携帯各社の競争軸の一つだったからだ。携帯大手は基地局をそれぞれ10万局規模で整備し、エリアの広さを競い合った。

 だが5Gの時代に入り状況は大きく変わった。当初、5Gに利用できる周波数帯は遠くまで飛びにくいミリ波帯や、衛星放送などとの干渉調整が必要な3.7GHz帯など。5Gのインフラ整備は簡単ではない。

 さらに総務省は5Gの電波割り当ての条件として、全国を約4500のメッシュで区切ったエリアの半数を、5年以内に整備することとしている。4Gのエリア外である、人が住んでいない山間部なども4500のメッシュに含まれており、大きな投資負担がのしかかる。こうした事情から国内携帯大手も自前主義を捨て、協調できる部分は共同歩調を取るまでスタンスが変わったといえる。

 海外では一足先に設備共用が一般的だ。諸外国では電波オークションによって電波を割り当てるため、事業参入には多額の資金が必要となる。資金回収のためには設備投資の効率が求められるため、その切り札となる設備共用を受け入れやすい素地があったと考えられる。

 米国ではタワーカンパニーと呼ばれる、複数の事業者に基地局設置場所となる鉄塔を貸し出す企業が存在感を見せている。米アメリカンタワー(American Tower)など数社がビジネスを展開しており、米AT&Tなど米国の携帯大手はタワーカンパニーが提供する鉄塔などを借りてインフラ整備を進めている。

 中国でも、タワーカンパニーである中国鉄塔が中国の携帯大手3社に鉄塔などを貸し出しているほか、2位、3位事業者である中国電信(China Telecom)と中国聯合通信(China Unicom)が設備共用しながら5G展開を進めている。