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 総務省は2020年6月、23年度末までに携帯各社が整備する5G(第5世代移動通信システム)の基地局数を、当初計画の3倍となる21万局超に引き上げる目標を公表した。20年9月までに既存4Gで利用する周波数帯を5Gに転用できるように制度改正し、携帯各社の5G基地局整備を促す考えだ。ソフトバンクとKDDIが5G基地局整備の大幅前倒しを表明する一方、慎重な姿勢を崩さないのがNTTドコモだ。4G電波の転用では速度が出ない「なんちゃって5G」にとどまるという懸念を示す。

4G電波転用では速度が出ない「なんちゃって5G」に

携帯4社は5Gのピクト表示の方針に合意している。4G周波数帯を5Gに転用した場合、どの程度速度が出るのか。利用者保護が求められる。(撮影:日経クロステック)
携帯4社は5Gのピクト表示の方針に合意している。4G周波数帯を5Gに転用した場合、どの程度速度が出るのか。利用者保護が求められる。(撮影:日経クロステック)

 筆者が先日NTTドコモ社長の吉沢和弘氏にインタビューした際、同氏が最も語気を強めたのは4G周波数帯を5Gに転用する話題の時だった。吉沢氏は「既存周波数帯を5Gに転用する方針に同意するものの、4G帯域を5Gに転用しただけでは速度が出ない。ピクト表示は5Gだが4Gと性能が変わらない“なんちゃって5G”だ。利用者が有利誤認しないように注意を図るべきだ」と強い口調で指摘した。

 4G周波数帯を5Gに転用する総務省の新たな方針は、ソフトバンクらの強い要望によって実現した。5G向けに携帯各社に割り当てられた3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯という周波数帯は電波が遠くまで飛びにくい。電波が飛びやすい4G周波数帯を5Gに転用できれば、5Gエリアを一気に広げられる。

 一方のデメリットは、吉沢氏が指摘するように、4G周波数帯の帯域幅をそのまま5G に転用するだけでは速度は4Gと変わらない点だ。それが「なんちゃって5G」たるゆえんだ。

 ソフトバンクとKDDIは21年度末までにそれぞれ、5G基地局を5万局に増やす方針を示す。当初の計画を大幅前倒しできた理由の一つが4G周波数帯の5Gへの転用だ。ソフトバンク関係者は「制度整備前であるため具体的にはこれからだが、4G向けの700MHz帯や1.7GHz帯から5Gへの転用を進めたいと考えている。4G周波数帯を5Gに転用したエリアでは、当初は1Gビット/秒の速度を実現していきたい」と打ち明ける。

 これに対しドコモの吉沢氏は「当社も既存周波数帯の活用を進めるが、21年度末までに5G基地局を2万局とするドコモの方針は、あくまで5G向けの新たな周波数帯で実現する。高速・大容量を提供できる5G向け新周波数帯を積極的に展開する。利用者保護の観点から誤解を受けないようにすべきだ」と力を込める。

 実際、海外ではピクト表示の有利誤認で問題になった経緯がある。米国の大手携帯電話事業者のAT&Tが、4Gで通信しているにもかかわらず「5GE」というピクト表示を採用し、利用者の反発を招いたケースだ。こうした事態を防ぐため国内の携帯大手4社は「5G」のピクト表示について、通信中の場合は5Gエリアのみ、待ち受けの場合は4Gのアンカーバンドで在圏しているケースを認めるという方針で合意している。

 ただし4G周波数帯を5Gに転用した場合に速度が出ないという問題は残ったままだ。総務省は「ユーザーがどの程度の最大通信速度が出るのか把握することができるように、エリア別のマップやリストを公表するなど、適切な周知手段をもってユーザー保護に努めていくことが望ましい」と指摘する。