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 楽天がアピールしたことで世界的に注目を集めている携帯電話基地局への仮想化技術、いわゆるvRANの導入。実はソフトバンクも2018年からvRANの検証を進めているものの、技術的に未成熟だとして導入に踏み切れていない。同社が最近になって期待を寄せるのが、米NVIDIA(エヌビディア)のGPUを活用したvRANだ。GPUが得意とする並列処理を使うことで、課題であるMIMO(Multiple Input and Multiple Output)による計算量増大を抑えられる可能性があるとする。

NVIDIAのエッジサーバー「NVIDIA EGX Edge Supercomputing Platform」
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NVIDIAのエッジサーバー「NVIDIA EGX Edge Supercomputing Platform」
NVIDIA Aerialと組み合わせることでvRANとして動作する(出所:NVIDIA)

設置スペースが12倍、消費電力は5倍増で「vRAN導入は困難」

 携帯電話網への仮想化技術の導入は、もはや世界的な流れだ。コアネットワークでは一足先に「NFV」(Network Functions Virtualisation)として、多くの通信事業者が導入を進めている。一方で基地局など無線アクセスネットワーク(RAN)部分への仮想化技術、すなわちvRANは、現時点で楽天など一部の事業者の導入にとどまっている。DU(Distributed Unit)やCU(Central Unit)など基地局の無線制御機能は、無線信号をリアルタイム処理する必要がある。この部分の負荷が高く、現時点ではCPUを使った汎用サーバーでは荷が重いといわれる。

 ソフトバンク先端技術開発課課長の堀場勝広氏は「当社のように多くの周波数帯を活用している事業者は、vRANによる信号処理の計算量が膨大になるという課題がある。割り当て周波数が少ない事業者とは事情が違う」と指摘する。

 ソフトバンクは現在、7つの周波数帯、合計720MHz幅の帯域を活用して携帯電話サービスを提供しているという。帯域が広がれば広がるほど計算量が増え、vRANで必要となるコンピューティングリソースも雪だるま式に増える。MIMOのレイヤー数も同様だ。増えれば増えるほど、信号処理の計算量は膨れ上がる。

ソフトバンクが過去に検証したvRAN(汎用サーバー)と専用装置の性能比較
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ソフトバンクが過去に検証したvRAN(汎用サーバー)と専用装置の性能比較
(出所:ソフトバンク)

 計算量が膨れ上がることによって、装置の設置スペースや消費電力は増大する。かつてソフトバンクは、専用装置と汎用サーバーを使ったvRANの性能を検証したことがある。その結果は「このままではvRANにはなかなか踏み切れない」(堀場氏)というものだった。vRANは専用装置の12倍の設置スペースが必要で、1局当たりの消費電力は5倍に膨れ上がることが分かったからだ。「5G(第5世代移動通信システム)が本格化すると、帯域やMIMOレイヤー数はさらに拡大し、信号処理の計算量はより増大する。信号処理に対する遅延の許容条件も厳しくなる」(堀場氏)という事情もある。楽天は、割り当て周波数帯が少なく、利用者数もソフトバンクの10分の1以下という規模だからこそ、現時点でvRANに踏み切れたとも言える。

NVIDIAが基地局市場に進出、GPUを使ったvRAN発表

 いったんはvRANの導入は難しいと結論付けたソフトバンク。ここに来て、新たな候補が浮上してきた。NVIDIAのGPUを使ったvRANだ。NVIDIAは2019年秋に「NVIDIA Aerial」という名称で、同社のGPUをvRANに活用できるソフトウエア開発キットを発表した。