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 楽天モバイルが総務省の有識者会議で要望しているプラチナバンドの再分配が、業界を越えた波紋を呼んでいる。NTTドコモなど大手3社に割り当てられた帯域の一部の再配分を要望するという前代未聞の事態に大手3社は反発。「他の無線システムを利用している周波数も対象に議論すべきだ」(NTTドコモ)とし、同帯域を利用するテレビ放送やITS(高度道路交通システム)を含めた議論に広がってきたからだ。このことが、業界をまたぐ電波の有効活用という課題を浮き彫りにしている。

 舞台となっているのは、総務省が2020年11月末から開始している、電波利用の将来像を検討する有識者会議「デジタル変革時代の電波政策懇談会」だ。20年12月下旬に開かれた会合に出席した楽天モバイル社長の山田善久氏は、「既存プラチナバンドを再配分して新規参入事業者への機会の平等を実現してほしい」と説明。NTTドコモとKDDI、ソフトバンクに割り当てられた700M~900MHz帯の電波の割当幅を一部減らし、楽天モバイルに再配分してほしいという要望を示した。

楽天モバイルが総務省の有識者会議で示したプラチナバンドの再配分案
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楽天モバイルが総務省の有識者会議で示したプラチナバンドの再配分案
(出所:楽天モバイルが提出した総務省会合資料)

 山田氏は同懇談会の下部に設置された「移動通信システム等制度ワーキンググループ(WG)」でも同様の主張を展開。21年2月の同会合では、15MHz幅単位となっている既存大手向けの電波の割り当てを5MHz幅ずつ減らすことで、新規参入事業者を含めて公平な割り当てになるというより具体的な案を示した。

 プラチナバンドと呼ばれる700M〜900MHz帯は、建物の奥などに回り込みやすく、携帯電話のエリアを充実させるために不可欠の電波だ。現在このプラチナバンドは、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクに均等に割り当てられている。

 だが新規参入事業者である楽天モバイルにプラチナバンドは割り当てられていない。700M~900MHz帯の割当時に、楽天モバイルは事業に参入していなかったからだ。携帯電話の電波は5年単位の割り当てが基本であり、認定期間終了後も再免許によって同じ事業者が電波を使い続けるケースがほとんど。楽天モバイルの主張は、長期間固定化されやすい電波の割り当てを、機動的に見直すべきだという主張でもある。

 NTTドコモなど大手3社は、当然のことながら難色を示す。大手3社が、大きな影響になると主張するのが、10万局単位で設置済みのリピーター(中継局)の改修が必要になる点だ。「リピーターは周波数固定で設計している」(KDDI)ため、ハード機器の改修に期間も費用もかかるとする。技術面の問題はもちろん本音では、敵に塩を送るような電波の再配分などには到底応じられないということだろう。

 そのため既存大手は議論の矛先を他の業界に広げ、楽天モバイルの要望をかわそうという動きも見せる。NTTドコモは21年2月のWG会合で「他の無線システムを利用している周波数も対象に議論すべきだ」と主張。(760MHz帯の)ITSや(710MHz以下の)テレビ放送の帯域を含めた再配分を議論の俎上(そじょう)にあげた。