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 楽天グループ(以下、楽天)が正念場を迎えている。2021年8月11日に発表した2021年1~6月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が654億円の赤字だった。携帯電話事業の設備投資が重荷になり、赤字幅は前年同期から拡大。同年7月末には米国の格付け機関S&P Global Ratingsが、楽天の長期会社格付けを投資不適格相当に引き下げる事態に至った。起死回生に向け同社は同年8月4日、ドイツの新興通信事業者に対して自社開発した仮想化通信技術を輸出すると発表した。巨額赤字に陥る楽天の救世主になるか。

「決戦は人口カバー率が96~97%になってから」

 「ローミングコストがあまりにも高い」。同年8月11日に開催した決算説明会で楽天会長兼社長の三木谷浩史氏は思わずこう漏らした。

「ローミング費用があまりにも高い」と決算会見で思わず漏らす楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏
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「ローミング費用があまりにも高い」と決算会見で思わず漏らす楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏
(出所:決算会見の中継をキャプチャー)

 同社の国内EC(電子商取引)事業やクレジットカードなどの金融事業の収益は、巣ごもり需要から順調に拡大している。だがエリア拡大を急ぐモバイル事業の投資負担が足を引っ張り、楽天全体の業績は赤字が拡大した。

 同社モバイル事業の営業損失は21年1~6月期で1972億円(前年同期は892億円の損失)に膨らんだ。エリア拡大のための基地局先行投資が重荷になったほか、契約増に伴って自社エリア外で併用するKDDIのローミングサービス費用が増えたことが足を引っ張ったという。

 モバイル事業の四半期業績推移を見ると、21年4~6月期の売上高は前四半期から微減の514億6200万円にとどまる。同社の累計契約申込数は21年6月までに442万件へと拡大した。同年4月からは1年間無料キャンペーンの終了に伴って、利用者の課金が始まっている。にもかかわらず、なぜ前四半期から売り上げが減っているのか。

楽天の携帯電話事業の四半期業績推移
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楽天の携帯電話事業の四半期業績推移
(出所:楽天グループ)

 楽天モバイル社長の山田善久氏は「(楽天モバイルの)MVNO(仮想移動体通信事業者)プランから(携帯電話プランへの)移行に際して3カ月無料としているため、その影響を受けた」とする。

 楽天モバイルは21年1月、新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を発表。月に1Gバイト以下の利用の場合は0円という破格の新メニューを投入した。その効果もあり、年度末商戦では多くの顧客を獲得した。その一方で楽天グループとしては、モバイル事業によって稼ぐ力を先送りにしてしまったことになる。

 楽天の携帯電話事業は、顧客が増えるとローミング費がかさむという悪循環に陥っている。そのため顧客獲得のアクセルを完全に踏み込めていない様子だ。三木谷氏は「決戦は(自社)ネットワークの全国人口カバー率が96~97%になってから。今は我慢してスピードをコントロールしないといけない状況」と打ち明ける。

 21年6月末時点で楽天の自社ネットワークの全国人口カバー率は約90%。総務省に提出した開設計画を大幅に前倒しする一方、21年夏を目標としていた人口カバー率96%達成は、半導体不足の影響を受けて困難となった。達成時期は21年内に後ろ倒しした。

 自社ネットワークのエリアを拡大していくことで、KDDIのローミングサービスをエリアごとに終了し、ローミング費を抑えられる。「恐らく(21年)10月、(22年)3月のタイミングでローミングを段階的にオフにできる。3月が1つのポイントになる。短期的なリターンはかなり改善できる。このようなタイミングで(顧客獲得を)加速したい」と三木谷氏は力を込める。