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 2040年度までにカーボンニュートラル(脱炭素)を実現する目標を掲げたNTTグループ。実現の鍵を握るのが、同社が25年ころから段階的な導入を目指す、次世代情報通信基盤構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」だ。実にグループ全体の温暖化ガス排出量の45%をIOWNの技術で減らす目算だ。だが現時点でIOWNは研究開発段階。事業化へ向け、いわゆる「死の谷」を越えなければならない。そんなIOWN成否の運命を託されたのが、21年7月に新設した「IOWN総合イノベーションセンタ」のセンタ長に就任した元富士通副社長の塚野英博氏である。自ら「異分子」と呼ぶ塚野氏は、IOWNの事業化への道筋をつけられるか。

 「富士通で40年近く、もうからないと動かないという事業会社の目線で仕事をしてきた。『異分子』となってIOWN構想にそういう目線を持ち込む」――。21年7月にIOWN総合イノベーションセンタのセンタ長に就任した塚野氏は、このように意気込む。

IOWN総合イノベーションセンタ長の塚野英博氏。富士通副社長などを歴任後、NTT澤田社長からの電話でNTTグループ入りした
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IOWN総合イノベーションセンタ長の塚野英博氏。富士通副社長などを歴任後、NTT澤田社長からの電話でNTTグループ入りした
(出所:NTT)

 IOWN総合イノベーションセンタは、NTTグループが一丸となって推進するIOWN構想を加速するため、21年7月に新たに設立した研究開発組織だ。NTT持ち株会社にとって第4の総合研究所になるが、あえて「研究所」ではなく「センタ」という名称をつけた。これまでの研究組織が、研究開発の研究に軸足を置いているのに対し、新設したIOWN総合イノベーションセンタは「商用に近い開発側に軸足を置く」(塚野氏)というミッションからだ。

 NTTが打ち出すIOWN構想は、光技術を活用することで、電力消費を大幅に抑えた超高速・大容量、超低遅延な情報処理基盤を作り上げることが狙いだ。光信号と電気信号を不可分に融合する光電融合技術が鍵を握る。

 光電融合技術をサーバー内のCPUやアクセラレーターを結ぶ配線のほか、CPUと回路を結ぶI/O(入出力)部分、将来的にはCPU内部の配線まで活用することで、既存のサーバーアーキテクチャーも変化を遂げる。NTTが「ディスアグリゲーテッドコンピューティング」と呼ぶ新たなコンピューティングアーキテクチャーである。NTTはこのディスアグリゲーテッドコンピューティングを活用した「スーパーホワイトボックス」と呼ぶデバイスの第1弾を、25年にも実現したい考えだ。さらにスーパーホワイトボックス上で動作するOS、コントローラー、アプリケーションなども開発し、IOWN構想を具現化するインフラとしていく計画だ。

 これらの研究開発はNTT研究所が中心となって進めているものの、現時点では研究段階のものも多い。IOWNを事業化していくには、商用開発という次の関門が待ち構えている。現時点でIOWNの基礎研究と商用開発には空白がある。そのギャップを埋め、IOWN構想のインフラとなる、スーパーホワイトボックスやそのOS、アプリケーションなどを商用化に近い部分まで開発するのが、IOWN総合イノベーションセンタとしての役割となる。

富士通副社長などを歴任後、澤田氏の電話でNTTへ

 そんな重要ミッションを託された塚野氏は、NTTグループにとって文字通り異分子と言える存在だ。

 塚野氏は17年から19年にかけて富士通の副社長CFO(最高財務責任者)として同社の改革を断行。その後、執行役員副会長に就いた後、20年3月末に富士通を退社した。

 「富士通時代の最初の26年間は調達部門にいた。その後、経営戦略室長やCFOなどを担ったが、一貫して関わったのが半導体事業。半導体という先端テクノロジーを通じて、スマートフォンやパソコン、サーバー、ネットワーク機器などに関わり続けてきた」と塚野氏は振り返る。