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 NTTドコモが2022年春から4G周波数帯の一部を5G(第5世代移動通信システム)向けに転用する方針を明らかにした。2年後の24年3月に人口カバー率90%超を目指す。

 NTTドコモはこれまで、4G電波を転用した5Gでは、速度が変わらない「なんちゃって5G」だとして転用に否定的だった。一方でソフトバンクとKDDIは、エリア展開に有利な低い周波数帯中心の4G電波を5Gに有効活用し、22年春には人口カバー率90%に近づくほど5Gエリアを広げた。

 結果的にドコモの5Gエリア展開は、他社と比べて2年近く遅れることになる。今回のドコモの方針転換は、他社に追いつくためには背に腹は代えられなくなったように見える。ただドコモが4G電波の5G転用に踏み切る理由は、それだけではないようだ。

ドコモは「瞬速5G」をうたい、これまで5G専用帯域によるエリア展開にこだわってきた
ドコモは「瞬速5G」をうたい、これまで5G専用帯域によるエリア展開にこだわってきた
(出所:NTTドコモ)
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SA時代に4G電波の5G転用が不可避

 方針転換の理由についてのドコモの公式コメントは「5G契約数が増えてきたことにより、当初から状況が変化したため」である。

 ドコモはこれまで、未来永劫(えいごう)に4G電波の5Gへの転用を否定していたわけではない。5G導入の初期段階で4G電波を転用した場合、ドコモの利用者の大部分を占める「既存の4G利用者の品質が低下する」(ドコモ)という事情もあり、当初は転用に踏み切れなかったという。5G契約数が増えてきた段階で、4G電波の5Gへの転用を進める方針をあらかじめ示していた。

22年春から4G向けに運用してきた700MHz帯、3.5GHz帯などを順次、5G向けに転用する
22年春から4G向けに運用してきた700MHz帯、3.5GHz帯などを順次、5G向けに転用する
(出所:NTTドコモ)
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 ドコモの5Gサービスは、21年12月末時点で895万契約に達するなど、一定の規模に拡大した。代わりにドコモの4Gサービスの契約数は、21年6月末を境に減少カーブを描き始めている。5G契約の伸びと4G契約の減少を見据えて、ドコモがこのタイミングで4G電波の5Gへの転用に踏み切ったといえる。

 もう一つ、ドコモが公式コメントで触れていない事情として、5G SA(Stand Alone)方式の本格展開に向けた準備という側面がある。

 SA方式は、コア設備を4G設備で流用していたこれまでのNSA(Non-Stand Alone)方式と異なり、すべて5G専用設備を使う。従来の超高速・大容量に加えて、超低遅延、多数同時接続といった機能も実現できるようになる。1つのネットワークを、用途に応じて仮想的に分割する「ネットワークスライシング」のような機能もSA方式を導入することで初めて可能になり、真の5Gのポテンシャルを発揮できると期待されている。

 一方、これまでの連載で筆者が指摘した通り、SA方式は当初、現行のNSA方式と比べて速度が低下する恐れがある。NSA方式の通信速度は、4G帯域も活用して通信速度を向上するのに対し、SA方式は4G帯域を使わず、5G専用帯域のみでサービスを提供するからだ。4G帯域によって底上げしていた分がSA方式ではなくなることで、そのままでは速度が低下してしまう。

 実際、ドコモが21年12月に法人を対象にサービス開始した5G SA方式の最大速度は、下り1.7Gビット/秒にとどまる。ドコモのNSA方式の場合、下り最大速度は4.2Gビット/秒に達している。

 ドコモは22年夏からSA方式をコンシューマーにも広げる計画だ。その際に、NSA方式と比べてSA方式の速度が劣化すると、コンシューマーに魅力をアピールしづらくなる。そこでドコモは、4G帯域を5G向けに転用することでSA方式で速度向上を図るわけだ。こうしてコンシューマーへのSA方式展開の準備をしたと考えられる。

これまでの5G競争軸は、5Gスマホをどれだけ販売したか

 以前の連載で筆者は、5G専用帯域による展開に固執するドコモは競争上、不利になると指摘した。5Gエリアを広げることこそが、5Gの重要な競争軸になると筆者は考えていた。

 今振り返るとこの考えは半分当たり、半分は外れたと自戒する。