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 日本で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まって2年半が過ぎた。5Gエリアは徐々に広がり、国内の5G契約数も2022年3月末時点で4500万契約を突破した(総務省調べ)。

 だが利用者からは、5Gならではのメリットを喜ぶ声があまり聞こえてこない。調査会社のMM総研が2022年8月末に公表した調査からは、4Gスマホの利用者の約65%が5Gスマホの利用開始時期を未定としているという結果が明らかになった。「現状(4G)のプランや端末に満足している」という声が最も多く、現在の日本の5G契約数は、端末の買い替えによって自動的に5G契約が増えているだけという実態が浮かび上がる。

フィンランドNokia(ノキア) モバイルネットワークRAN 製品ラインマネジメント製品管理部門責任者のBrian Cho(ブライアン・チョー)氏
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フィンランドNokia(ノキア) モバイルネットワークRAN 製品ラインマネジメント製品管理部門責任者のBrian Cho(ブライアン・チョー)氏
(写真:日経クロステック)

 「確かに日本は他国と比べて5Gの顧客満足度が低い。それは日本は他国と比べて4Gの体感品質が良く、5Gと4Gの差分を感じられないからだ」。こう指摘するのは、フィンランドNokia(ノキア) モバイルネットワークRAN 製品ラインマネジメント製品管理部門責任者のBrian Cho(ブライアン・チョー)氏である。

 同氏は「5Gと4Gの体感速度の差が1.5倍くらいだと利用者には違いが分からない。だが5倍くらいの差になると違いを感じ始めるので、顧客満足度が向上する」と続ける。

 実際、5Gと4Gの体感速度の差を約5倍にして顧客満足度向上につなげたのが、ノキアも技術協力するフィンランドの通信事業者であるElisa(エリサ)だ。「欧州の4Gは、日本などと比べて品質はそれほど高くなかった。このような背景もあり、エリサの5Gスループットは4Gと比べて約5倍に高まった。その結果、エリサの5Gサービスは顧客満足度が非常に高く、ARPU(1契約当たりの月間平均収入)も向上するという好循環を生んでいる」(同氏)。

 日本は4Gの体感品質が高いが故に、逆に5Gならではのメリットを打ち出すことに苦労していることになる。

 日本の5G顧客満足度を高めるためには、4Gとの違いを明らかに感じるまで速度を上げていくしかない。同氏は、そのためには複数の周波数帯を束ねて速度を高める5Gキャリアアグリゲーション(CA)の活用が重要になると指摘する。

5Gキャリアアグリゲーションで体感速度を向上させた米TモバイルUSの例
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5Gキャリアアグリゲーションで体感速度を向上させた米TモバイルUSの例
(出所:Nokia)

 世界を見渡せば、5Gのキャリアアグリゲーションの成功例は、米国の通信事業者であるT-Mobile US(TモバイルUS)に見てとれる。「TモバイルUSは(電波が遠くまで届きやすい)ローバンドの600MHz帯FDDバンドでエリアを展開し、ミッドバンドの2.5GHz帯TDDバンドで速度向上を図るという組み合わせで体感品質を高めている。米国メディアの調査では、TモバイルUSが米国内で最も速いダウンロード速度を記録するようになっている」(ノキアのチョー氏)。

「日本は5G基地局へのMassive MIMO導入が遅れている」という指摘も

 日本の携帯電話事業者も5Gキャリアアグリゲーションを進めているが、現状では利用者の体感品質を大きく変えるほどのインパクトをもたらしていない。その背景には、日本におけるもう1つの特殊な事情があるという指摘がある。日本では、スループット向上に有利なアンテナ技術である「Massive MIMO」の5G基地局への導入が諸外国と比べて遅れているという点だ。